小下村塾/投球の仕方--自分で発信!

東京大学「メディア表現演習」講義

第8講 2003年6月23日

制作実習(映像編2)―自由テーマ(構成・撮影プラン)

今回は、各班に分かれて現場へ撮影に出る予定だったが、雨のため、教室内での講義に変更。各班の現時点での撮影・構成プランを発表してもらい、今後の作業についてアドバイスを加えていく。

[1]A班:社情研・校舎の不思議

社情研(社会情報研究所)の校舎は特殊な作り。
カメラを持って校舎内を探検し、建物の不思議を解明していく。


・11階建てなのに4階建てに見える
  →通行人にインタビュー「何階建てに見えますか?」

・屋上から社情研の「広さ」、「新旧館の対比」を撮る。

・建物の広さに対して、2階の教室は異常に狭い。実は隠された書庫が!
   →司書の人にインタビュー、校舎の平面図。

・知られざる地下もある。
  →警備係にインタビュー

【アドバイス】―取材時のワクワク感を完成品まで冷ますな!

この班の作品の肝になるのは、≪新たな発見をしていく面白さ≫。取材者自身のワクワク感を、冷ますことなく視聴者に伝えよう。撮影の際、わざとらしく芝居をしたりせず、自分達の自然なリアクションを撮ること。

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[2] B班:僕らの知らない東大

学生達が普段見ていない、東大(本郷キャンパス)の別な顔を探したい。何を撮るかはまだ絞りきれておらず、候補に上がっている要素は以下の通り。

・夜の東大
・夜の三四郎池
・夜中の理系研究室
・卒業生へのインタビュー

各ブロックの≪フック≫を見出せ!

いくつかの要素を盛り込む場合には、各要素をつなぐ≪フック≫を見出すこと。≪フック≫がないと各要素がブツ切れになってしまうし、作品に≪軸≫がなくなり、単なる寄せ集めになってしまう。

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[3] C班:ウエディング・トリック

突然の出来事に、人間はどう反応するのか?社会調査モノに挑戦したい。

  • ウエディングドレスを着た制作メンバーの1人(男)が街の中を走り、通り掛かりの人達の反応を撮る。
  • どんなリアクションが撮れるかで、構成を考えたい。
レンズだけでなく肉眼で見る!

この班は、とにかく撮影時の反射神経が勝負!通行人の一瞬のリアクションを捉えよう。視野の狭いファインダーやモニタの中だけに注意力を集中せず、カメラから目を上げて、キョロキョロしながらリアクションを探そう。

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[4] D班:レトロと近代の対比

どのような「対比」にするのか、次の点で迷っている。

  • 同じ街の中で、近代化が進んでいる地域と昔ながらの地域を対比して撮る。
    (新宿、浅草、新橋など、一つの街の中での対比)
  • 東京都内で、近代的な街と昔ながらの街を対比して撮る。
    (浅草vs新宿など、別な街の対比)
着地点はどこに?

古い物と新しい物の対比で、最終的に何を言いたいのか考えよう。「同じ東京でもエリアによってこんなに違う」なのか、「同じ町内でもこんなに違う」なのか。着地点が見えれば、対比の仕方も自ずと決まるはず。

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[5] 受講者からの問題提起
   ―≪真実追求≫と≪面白さ追求≫

受講者のメーリングリスト上で、下記のような問題提起があった。"面白いものを作りたい"という皆の制作姿勢に直接関わる問題なので、制作前の現段階で、しっかり考えておこう。


問いかけ


リポート映像
(ニュース、ドキュメンタリー)

いかに視聴者を情報充足させナルホドと思わせるか
創作・やらせを排し真実を追求
V.S.
エンタテイメント映像
(ショートフィルム、バラエティ)

いかに視聴者を楽しませるか

ありとあらゆる創作を追求

視聴者の欲求…「真実を知りたいし、面白いものを見たい」
 ⇒両立はとても困難?


リポートの中に、エンターテイメント性を採り入れたい(視聴者を笑わせたい)と思ったら、ある程度のやらせは必要?



【下村の回答】

≪真実≫と≪面白さ≫の両立は、できる!
視聴者がリポートに求める≪面白さ≫は、"Funny"ではなく"Interesting"だ。それは、真実の中にこそある。リポート制作で"Funny"を求めて「やらせ」や「創作」に走ってしまうのは、方向性を見誤っていないか?

例:ケーススタディ―『大ちゃんの絵ができた』
私が十数年前に作ったリポート『大ちゃんの絵ができた』は、全国の障害を持つ人達が、1枚の大きな絵を完成させるイベントを追ったニュース。絵の原作者、7才の大ちゃんが主人公で、多くの視聴者から「面白かった!」との感想が寄せられた。しかしそこには、「やらせ」も「創作」もなく、真実を描いただけである。

静岡大学集中講義参照
 次回予告―

次回は、各グループに分かれて撮影に取り組む。今回出したアドバイスを元に、もう一度プランを練り、撮影日に備えてほしい。