小下村塾/投球の仕方--自分で発信!
東京大学「メディア表現演習」講義
今回は、各班に分かれて現場へ撮影に出る予定だったが、雨のため、教室内での講義に変更。各班の現時点での撮影・構成プランを発表してもらい、今後の作業についてアドバイスを加えていく。
[1]A班:社情研・校舎の不思議
社情研(社会情報研究所)の校舎は特殊な作り。
カメラを持って校舎内を探検し、建物の不思議を解明していく。
・11階建てなのに4階建てに見える
→通行人にインタビュー「何階建てに見えますか?」
・屋上から社情研の「広さ」、「新旧館の対比」を撮る。
・建物の広さに対して、2階の教室は異常に狭い。実は隠された書庫が!
→司書の人にインタビュー、校舎の平面図。
・知られざる地下もある。
→警備係にインタビュー
【アドバイス】―取材時のワクワク感を完成品まで冷ますな!
この班の作品の肝になるのは、≪新たな発見をしていく面白さ≫。取材者自身のワクワク感を、冷ますことなく視聴者に伝えよう。撮影の際、わざとらしく芝居をしたりせず、自分達の自然なリアクションを撮ること。
[2] B班:僕らの知らない東大
学生達が普段見ていない、東大(本郷キャンパス)の別な顔を探したい。何を撮るかはまだ絞りきれておらず、候補に上がっている要素は以下の通り。
・夜の東大
・夜の三四郎池
・夜中の理系研究室
・卒業生へのインタビュー
各ブロックの≪フック≫を見出せ!
いくつかの要素を盛り込む場合には、各要素をつなぐ≪フック≫を見出すこと。≪フック≫がないと各要素がブツ切れになってしまうし、作品に≪軸≫がなくなり、単なる寄せ集めになってしまう。
[3] C班:ウエディング・トリック
突然の出来事に、人間はどう反応するのか?社会調査モノに挑戦したい。
- ウエディングドレスを着た制作メンバーの1人(男)が街の中を走り、通り掛かりの人達の反応を撮る。
- どんなリアクションが撮れるかで、構成を考えたい。
レンズだけでなく肉眼で見る!
この班は、とにかく撮影時の反射神経が勝負!通行人の一瞬のリアクションを捉えよう。視野の狭いファインダーやモニタの中だけに注意力を集中せず、カメラから目を上げて、キョロキョロしながらリアクションを探そう。
[4] D班:レトロと近代の対比
どのような「対比」にするのか、次の点で迷っている。
- 同じ街の中で、近代化が進んでいる地域と昔ながらの地域を対比して撮る。
(新宿、浅草、新橋など、一つの街の中での対比) - 東京都内で、近代的な街と昔ながらの街を対比して撮る。
(浅草vs新宿など、別な街の対比)
着地点はどこに?
古い物と新しい物の対比で、最終的に何を言いたいのか考えよう。「同じ東京でもエリアによってこんなに違う」なのか、「同じ町内でもこんなに違う」なのか。着地点が見えれば、対比の仕方も自ずと決まるはず。
[5] 受講者からの問題提起
―≪真実追求≫と≪面白さ追求≫
受講者のメーリングリスト上で、下記のような問題提起があった。"面白いものを作りたい"という皆の制作姿勢に直接関わる問題なので、制作前の現段階で、しっかり考えておこう。
問いかけ
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視聴者の欲求…「真実を知りたいし、面白いものを見たい」
⇒両立はとても困難?
リポートの中に、エンターテイメント性を採り入れたい(視聴者を笑わせたい)と思ったら、ある程度のやらせは必要?
【下村の回答】
視聴者がリポートに求める≪面白さ≫は、"Funny"ではなく"Interesting"だ。それは、真実の中にこそある。リポート制作で"Funny"を求めて「やらせ」や「創作」に走ってしまうのは、方向性を見誤っていないか?
私が十数年前に作ったリポート『大ちゃんの絵ができた』は、全国の障害を持つ人達が、1枚の大きな絵を完成させるイベントを追ったニュース。絵の原作者、7才の大ちゃんが主人公で、多くの視聴者から「面白かった!」との感想が寄せられた。しかしそこには、「やらせ」も「創作」もなく、真実を描いただけである。
静岡大学集中講義参照