小下村塾/投球の仕方--自分で発信!
東京大学「メディア表現演習」講義
第14講 2003年9月8日
映画『home』鑑賞
※小林貴裕監督との質疑応答
この日は第13講に引き続き、半年間の講義の締めくくりとして、私が知る範囲で最も色濃く"市民メディア"カラーを発揮している作品『home』を特別上映。その後、ゲストの小林貴裕監督と質疑応答を行った。主人公の小林博和さんも途中から飛び入り参加し、興味深い議論となった。
半年間の講義を終えて
皆に投げかけたテーマ
- 映像メディアにおける「わかり易いリポート」「わかりにくいリポート」を分かつ、≪情報伝導率≫の違いは、どういった所で生じるのか。
- 友人間の会話とは全く異なる、不特定多数者に発信する際の≪情報伝導率≫の上げ方は。
- 「わかり易く・面白く伝える努力」が陥り易い"落とし穴"は。
最後に、ちょっと考えてもらいたいこと
- ■昨日の受講生メーリング・リストより
- 『こうやって徐々に映像の「眼」みたいなものを意識して映像をみる癖がついてくることが、自分にとっていいことか悪いことかは、僕にはちょっと分からなくなってきた今日このごろです。映像制作をプロフェッショナルにしている人は、映像の客観的視点と感情移入を簡単にスイッチできるものなんでしょうか。』
- ■下村からの返答メッセージ
- 君達は、テレビドラマの内容が事実ではなく、役者が演じている芝居だという事を知っている。にも関わらず、ストーリーの中に真剣にのめりこむ事ができる。
君達は、たぶんサンタクロースは実際に一軒一軒の家を回ってプレゼントを配っているわけではない、と思っている。にも関わらず、クリスマスの気分がしらけることはない。
ある事柄に対して≪引いた眼≫を持つことは、≪夢を失う≫ことを意味しない。「乗せられて楽しむ」よりも、「わきまえた上で自ら楽しむ」方が、消化レベルとしては次元が高い。
この半年の受講を終えて、自らドラマの役者やサンタクロースを体験した君達が、受講前よりも高次のメディア情報授受能力を身につけたことを、講師として期待する。