「地域」と「平和」と…来週、二つの市民映像祭

放送日:2005/11/19

■何でもあり! 市民が作る『湘南映像祭』-----------------------

まず金曜日には、神奈川県藤沢市で『湘南映像祭』が初めて開催される。主催者代表の森康祐さん(「湘南.tv」/眼のツケドコロ・市民記者番号No.14)にお話を伺う。

―これは、どういうイベントなんですか?

森:
市民や学生が作った、3分以内の映像作品のコンテストです。内容については、ドキュメンタリーでもドラマでもアニメーションでも、どんなジャンルでもOKということにしてます。応募は59本集まりました。湘南地域にお住まいのアマチュアの方が撮られた作品ですね。制作者の年齢も、上は70才代から、下は高校生の16才まで、幅広い年齢層です。

―少なくともTBSには70才以上の制作スタッフは、一人もいませんからね。その時点でもう、既存メディアは市民メディアに負けてますね。(笑)
集まった映像の予備審査はされるんですか?

森:
先週の水曜日にうちのメンバーの方で予備審査をしまして、映像祭本番で上映する18作品を決めました。

―どんな審査基準で観られたんですか?

森:
テーマ性、表現力、技術的な完成度という3つを設けてます。でも実際には、私達の場合「その他」っていうのがありまして、これはもう、自分たちが観ての、わがまま・独善で選びます(笑)。それから、マスメディアでは絶対に放映されないだろうというような作品や、地域色がはっきりと打ち出されてるような作品を選びました。

実際、どんな作品が集まってきたのか、一部をご紹介する。

(足音)
「×××好きよ! アグネスチャン好きよ!」
「ウェ〜〜〜。」
「母さん、アメリカの一番偉い人、誰?」
(中略)
「ダンカン、ダンカン!」
(ノイズ)
「大丈夫、大丈夫?」

―まったく意味の分からない会話が続いてるんですけど、これは一体、何なんですか?

森:
そうですね。これは本当にマスメディアでは流せない作品だと思うんですけど、学生が2人でコントをやってるのを、ただ延々と撮ってるだけなんですよ。湘南海岸に行って、砂の中に埋もれたりして。場所は湘南だけど、何をしてるかは分からない。でも面白い、という作品です。

―こういうブッ飛んだ作品が多いんですか?

森:
いや、こういうのもありますし、一方では、養護学校の生徒がカメラを持って、江の電に乗って遠足に行って、そのときに撮った静止画を集めた作品もありました。

―写真をビデオに取り込んで、スライドショーのようにして見せる、ということですか?

森:
そうです、そうです。だから、視点は(作品によって)全然違いますね。

―ほんとに幅の広い作品が集まってるんですね。
そもそも、なぜ「映像祭をやろう!」ということになったんですか?

森:
もともと「湘南.tv」の認知度を上げたい、というのがひとつの動機でした。もうひとつは、かつて私が伊勢にいたときの体験です。文化祭で30分くらいの映像作品を作ったことがあるんですけど、その時に、ひきこもりだったり、人と対面して接するのが苦手な子どもが、映像制作をしてる中で、あっという間に変わっちゃった事があるんです。自分から絵コンテを描いて、皆の前で発表して、「こういう作品を作ろうよ!」って言って。それで出来たのが『63歳の高校生』という作品なんですけど、そうした学生の表現力の強さに触れて、是非、地域の皆さんに、そういう学生の作品をみてもらいたい、というのが動機ですね。

「湘南.tv」はこのコーナーでも以前紹介しているが、藤沢市あたりを中心に活動している、市民達のインターネットテレビ局のことだ。 彼等は、このイベントを経て、すでに次のステップを考えている。

森:
次はですね、子供達の映像祭を企画してます。小学生から高校生までの子ども達に、映像をどんどん作ってもらって、「湘南キッズ映像祭」っていう名前にしようかなと思ってます。そして、そうした映像祭を継続的に行って、子ども達の表現力を観てもらう事で、地域の人達に元気になってもらいたいと思ってます。

湘南エリアに住む老若男女が自由に作ったショート映像18本を観て、刺激を受けたい方・自分の映像制作のヒントにしたい方は、下記へ。

  • 日時:11月25日(金)午後6時半〜
  • 場所:藤沢市民会館
  • 入場無料、予約不要

■動き出すヒントを得よう! 『東京平和映画祭 for youth』---------

もう1つは、湘南映像祭の翌日=来週土曜日(11月26日)に、東京で開催される『東京平和映画祭 for youth』。『東京平和映画祭』については、去年の夏、第1回開催当日の朝、このコーナーでもご紹介した。その後、第2回も順調に開かれて、そして今回の“for youth”(若者向け)となる。主催者である「東京ピースフィルム倶楽部」の若者、冨田貴史さん(眼のツケドコロ・市民記者番号No.15)にお話を伺う。

冨田:
(今回の映画祭は)サブタイトルが「あなたが戦地に行く前に」ということで、けっこうリアルなものになってます。ポジティブな意味でもネガティブな意味でも、「これから」を作っていくのは、やはり若者だと思うんです。その若者に対して、今の現状、いろいろな現実的な部分を伝えたい、というのが、一番の思いですね。

今回の映画祭では、4本の作品等が上映されるという。

(1)『ホピの予言2004年度版』

―これは、ネイティブ・アメリカンの“ホピ族”の人達のメッセージをまとめた映画ですよね。以前一度ブームになりましたけど、去年また新しく出来たということですか?

冨田:
『2004年度版』は、もともとの映像をベースに、最近のコメントを加えたものになります。

(2)『東京原発』

冨田:
これは日本の映画です。「東京に原発を作ろう」という政策を掲げる東京都知事役を、俳優の役所広司さんが演じる、本格的なエンターテイメント性の高い映画です。

(3)ピース・フィルム・メドレー

冨田:
『せんそうのつくりかた』、『9NINE:9条は証言する』、『暗殺学校』、それから米軍のアフガン攻撃の映像ですとか、イラク人が決死の覚悟で撮影した『ファルージャの証言』ダイジェストなどを、メドレーでご覧いただきます。世界中で今、どういうことが起こっているのか、というのを伝える内容になってます。グローバル・ピース・キャンペーンのきくちゆみさんが、(昔の映画でいう“活動弁士”のように喋りながら)進行していきます。

(4)「107+1 天国はつくるもの」

冨田:
こちらも日本の映画になります。まさに、この世の中に天国を作ろう、という思いで集まった若者達が、いろんなプロセスを体験していくドキュメンタリー映画です。それによって、実際に、自分達の力でいろいろなことを変えていくことができる、ということを発見していくストーリーです。

―ーこれは、昔、吉本興業で山崎邦正と組んで「TEAM-0」というお笑いコンビをやっていた、軌保博光さんが、監督を務めた作品ですよね?

冨田:
そうです。”てんつくマン”という名前に改めて。

(5)トークショー(プログラムでは映画(3)と(4)の間)

冨田:
映画の他に、星川淳さんと、田中優さんによる「ピース・トーク」があります。

『TUP』(=平和をめざす翻訳家連合)の星川淳さんは、去年の春、このコーナーにも登場している。イラクで人質になった高遠さん達の救出に動いた、様々な市民グループをメドレーでご紹介した際に、『TUP』の動きを報告していただいた。

冨田:
田中優さんは、『未来バンク事業組合』という市民バンクの理事長をされている方です。市民が自分達で資本を作って、平和や環境に関するNPOなどの活動に対して融資を実施する、という“銀行”です。 田中さんは、東京での「まちづくり」の中で、実際にどう平和を作っていくかということを考えておられて、(対照的に)星川さんは現在、屋久島で生活しながら、環境や平和というものを日常の中でどう作っていくかという活動をされている方です。ですから、この日の参加者がそれぞれの映画を観て、「自分達には何が出来るのか」と思ったときに、「実際にこういうことが出来るんだ」ということを、具体的に提案していただけるんじゃないかなと思ってます。

「面白い映画を観た」で終わるのではなく、「家に帰ってからどうするか」を考える時、屋久島の人と東京の人のアイディアなら、確かに、自分もどちらかに近い環境には暮らしていそうだから、役立つヒントが得られそうだ。

冨田:
今の時代の中で、「何かしたい」あるいは「何かおかしい」と思っている若い人は、是非会場に来ていただければ、これからに向けて何かしら得られると思います。
  • 日時:11月26日(土)10:30〜20:10(朝から晩まで映画三昧の一日! 出入り自由)
  • 会場:発明会館(東京・虎ノ門)
  • 料金:前売2000円(チケットぴあ)、当日2500円
        学割:前売1000円、当日1300円 ←さすが、for youth!
  • 問い合わせ:東京ピースフィルム倶楽部事務局 Fax:0479-62-1327
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