湘南市民TV局、いよいよ本日スタート!

放送日:2003/04/19

今日(4月19日)から、知る人ぞ知る新しいテレビ局が開局する。その名も『湘南市民TV局』!今日は、その中心メンバーの二人、慶應義塾大学環境情報学部4年、石元龍太郎君と鳥海希代子さんに話を聞く。

下村は常々、「市民メディアが次々に生まれては消え…の時代がしばらく続く」と発言しているが、先月末の『BSアカデミア』閉局(03.03.29当コーナー)や、この『湘南市民TV局』開局も、そうした動きの中にある。向こう何年かはそうした“スクラップ・アンド・ビルド”の時代が続くだろう。

市民メディアには様々な形態があるが、『湘南市民TV局』は、最も典型的な≪インターネットでの自前の映像発信方式≫。湘南に限らず全世界どこの地域にいても、番組を見ることができる。

鳥海:
今アップされているものの中では、まず、『湘南亀組』という、障害者と健常者が一緒に舞台を作るパフォーマンス集団があって、そのメンバーに取材したものがとても人気があります。そのメンバーの方は脳性麻痺なんですけど、同じ脳性麻痺の友人が取材して制作したものです。
あとは、主婦の方が、ゴミがどこでどう処理されるのか、市役所やゴミ処理場へ取材したもの。高校生が、友達のバンドの卒業ライブを撮ったものなんかです。どれも一本10分以内で、ものによっては3分半とか、短いものもあります。

インターネット放送なので、テレビと違って好きな時間にアクセスでき、見たい作品を見逃すこともない。

―どういう人達が作ってるの?

鳥海:
本当に一般の人達が、“市民ディレクター”として作ってます。
石元:
自分達で企画・撮影・編集ができる“市民ディレクター”が、現在20人くらい。いろんな形で協力してくれる人が50人くらいいます。

―“市民ディレクター”は、どうやって撮影や編集ができるようになったの?

鳥海:
私達、慶応大学湘南藤沢キャンパスの学生が中心になって、去年の夏から“湘南市民ディレクター講座”というのをやったんです。湘南藤沢キャンパスは、授業やサークルで映像を作る機会がたくさんあって、機材も揃っているので、映像を作れる学生がかなりいるんです。“市民ディレクター講座”では、≪伝えたいことをいかに伝えるか≫っていうことが中心なので、技術的なことはあまりやっていませんけどね。

その市民ディレクターの一人、森康裕さんに電話で伺う。森さんは“市民ディレクター講座”にずっと参加し、面白い作品を次々に作っている。現在はお仕事の都合で伊勢へ赴任中だ。

―どういういきさつで『湘南市民TV局』に参加されたんですか?

森:
藤沢市の広報に“市民ディレクター”の募集があって、面白そうだな、と思ったのがきっかけです。仕事の方は、メディアとはまったく関係ない仕事をしてるので、まさに飛びこみでした。

―森さんの作品の魅力は?

鳥海:
森さん自身が魅力、ですね。森さんの最初の作品は、藤沢駅のストリートミュージシャンを追ったもので、次が『ピンポン2』です。

映画「ピンポン」にちなんだこの作品は、中学校の先生が自宅の横に自費で建てた卓球場(実在)が舞台。髪を青く染め、短パンをはいたおばあさん(実在)が登場し、映画「ピンポン」を彷彿とさせるポーズをとる。この方は69才から卓球を始め、森さんが取材した時点で83才だった。このように、町に溢れている面白い人材を発掘できるのも、市民メディアの魅力の一つだ。

森:
カメラを通して人を見ることで、その人の感じ方が違ってくるんです。そこにハマっちゃいましたね。伊勢でも、定時制高校の生徒たちとか、知り合った大学生とか、撮ってみようと思ってます。
最近は、息子が通っていた町内の剣道部の送別会を記録した映像を編集しました。後輩のお母さんが一生懸命撮ってくれたものなんですけど、お母さんの視点で撮った、すごく優しい映像なんです。そういう映像に出会えたのは、『湘南市民TV局』に関わったおかげです。

最近は、デジタルビデオカメラが家庭にも普及し、ぱっと起こる出来事をその場にいる人が記録できる機会が多くなった。市民メディアには、大手メディアが取材日を決めて出かけていくより、はるかに豊かな映像素材がある。

―そもそも、『湘南市民TV局』は、どういうきっかけで始まったの?

石元:
大学のゼミで、≪メディア・リテラシー≫、≪オルタナティブ・メディア≫っていうキーワードで何か新しいことができないかって話してるうちに、≪地域≫っていうキーワードが重要だって気付いたんです。それは、自分達が生活している場だから。地域の中で動きが生み出されて行く仕組みを、映像が担えたらって考えました。

―実際に今まで出来てきた作品を見て、手応えはどう?

鳥海:
映像は道具でしかなくて、カメラがあるから、気になっていることが聞けたり、新しい発見があったりして、そこで出会った人がつながっていくんだなって。映像がなんらかの影響をもって、≪地域≫の中で新しい動きができていく、と感じています。

『湘南市民TV局』は、単なる映像供給だけでなく、町の人達をつなげていく役割を果たしているわけだ。

―いよいよWeb開局で、今日からの課題やプランは?

石元:
この秋から、ケーブルテレビへも、作品をパッケージした番組を供給していきたいと思っています。ケーブルテレビは放送時間が決まっていて、見られる人も限られているけれど、webに比べて画質が良いんです。Webとケーブルテレビの良いところを両方活かして、仕掛けていきたいです。

―他の地域でこれから市民TVを立ち上げたい人へのアドバイスを!

鳥海:
私達は、最初6〜7人の仲間でスタートしました。最初に熊本で既に活動していた市民メディアを見に行ったことで、メンバーでビジョンを共有できて、すごく意味がありました。今、全国でたくさん市民メディアが立ち上がっているので、≪見た上で動き出す≫っていうことが大事だと思います。
石元:
やったら絶対おもしろいし、感動するし、絶対自分のためになるから、是非やってほしいです。『湘南市民TV局』、見たらぜひコメントを残してください!
鳥海:
“市民ディレクター”としての参加もお待ちしてます!
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