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下村健一の中と外
「岸回生」内閣から「起死回生」内閣へ?
町田第六小学校で学級委員長や児童会長を歴任していた僕は、家に帰ると新聞を畳の上に広げ、政治面を読みふける“ヘンな少年”だった。その頃、僕の中で漠然とながら大きな存在感を持っていた政治家は、岸信介。と言っても、岸さんが首相を辞めたのは僕が生まれる2週間前のことだから、当然、現役時代の様子は記憶に無い。にも関わらず、ある時、岸さんを回想する記事で読んだ「両岸」という形容句が、小学生の僕のツボにハマったのだ。
「両岸」とは、簡単に言えば“どっちつかず”で自分のスタンスをわざとボカした岸さんの政治的技法を指す言葉だが、それは、友達同士の喧嘩の仲裁でも双方の主張にウンウンと頷き、児童会も典型的な“調整型”の運営をしていた当時の僕の流儀そのものだった。「そうか、僕のようなやり方を『両岸』っていうんだ!」と、何かピピッと感じたのを、今も覚えている。
(あ~、なんて老成したイヤな少年だろうねぇ! その後、思春期になると僕もこんな己に嫌気が差し、高校入学を機に「マイペース型」にガラッと性格改造をするのだが、それは今回のテーマじゃないので、置いといて…)
そんな子供時代の思い入れがあったので、安倍晋三という政治家が台頭してきた時から、僕はこの人を、殆ど“岸さんの孫”という意識だけで見ていた。だから、去年安倍首相が誕生した時には、心の中でこれを「岸回生」内閣だと勝手に捉えていた。…でも、それを番組等で言わなくてよかった。岸倒閣の時のような国会周辺を埋め尽くす大群衆など1人も要せず、あっさり倒れた安倍さんを、祖父の再来と称しては、ちと違いが大きすぎたから。
で、いきなり登場した後継者。一時は小泉再登板も取り沙汰され、私が一昨年書いた絵空事が現実味を帯びてゾッとしかけたが、結局は福田政権に収まった。各世論調査に見る支持率は妙に高いが、これは「福田さんを支持する人」の率ではなく、「国のトップに、もうそろそろ安定した支持率を持ってほしいと願う人」の率が表れた数字かもしれない。この国民心理が、自民党にとって「起死回生」をもたらしちゃったりするのだろうか。
そう言えば、かつて岸内閣が倒れた後を継いだ2代の政権は、「佐藤・池田総理、嘘だけ言うとさ」という回文で揶揄された。(逆から読んでも、サトウイケダソウリウソダケイウトサ。) 安倍さんも、ザ・ニュースペーパーによって「美しい国、憎いし苦痛」(逆から読んでも、ウツクシイクニニクイシクツウ)とひっくり返されている。福田さんも、間もなく山内あゆアナウンサーあたりから、チクリとネタにされてしまうのかな。