来週金・土・日曜の3日間(7月18日~20日)に、第5回東京平和映画祭が開催される。今朝は、主催者である『東京ピースフィルム倶楽部』事務局長、浅野 禎信さん(眼のツケドコロ・市民記者番号№70)にお話を伺う。
■米国人が撮った「イラク発売中」
東京平和映画祭は毎年このコーナーでも紹介しているが、去年までは年に1日だけの開催だった。今年は、一気に3日間、上映される映画も全部で11本&トークライブと盛りだくさんだ。
浅野: 皆に観てもらいたい映画が本当に多くて、3日間にしてみました。
初日(7月18日)は、いきなり話題作1本で幕を開ける。18:45開場で、開始は19:15から。
【1】『IRAQ for SALE』(ロバート・グリーンウォルト監督作品 2006年/75分)
浅野: これは、僕も観てびっくりしたんですけど、米国の軍事産業は非常にお金の儲かる産業で、それがある特定の企業にお金が行くようになっていて、戦争をやればやるほど儲かるシステムになっているっていうことを暴露しているような映画です。
――どこの国の人が作ったんですか?
浅野: 米国(人)です。
――じゃあ、自分の所の政府に対して異議を申し立てるという感じですね。米国でも上映されたんですか?
浅野: そうですね。でも、そんなに大っぴらに上映は出来ていないみたいで、草の根的な上映とか、あとはDVDとか作られて上映してるんだと思うんですけど。
■ダライ・ラマも、ジョン・レノンも
2日目(7月19日)からは、朝から夜まで、作品がずらっと並ぶ。開場は、9時半。幾つか作品をご紹介しよう。
【4】14:40~15:10
『破壊を伴う開発~DEVELOPMENT WITH DESTRUCTION~』(BBCWorld:アースレポートプログラム制作 2005年/25分)
浅野: これは、英国のBBC放送が沖縄を取材した映画です。DVD化になってます。
【5】15:25~16:25
『慈悲を生きる~ダライ・ラマ14世とチベット~』(Mickey Lemle 監督作品 1992年/58分)
――これは、ダライ・ラマ法王が出て来るんですか?
浅野: そうなんです。ダライ・ラマの人柄みたいなものが凄く浮き彫りになっている映画です。最近ちょっと、チベットが話題になってましたんで…。
聖火リレーのドタバタばかりがクローズアップされていたが、チベット問題について、実は知らないという人が凄く多い。この作品は、チベットの問題が何であるかについて学ぶ良い機会になるだろう。
【7】18:40~20:20
『PEACE BED アメリカVSジョン・レノン』(製作・監督・脚本:デヴィット・リーフ&ジョン・シャインフェルド 2006年/99分)
浅野: 私は、去年、劇場で観たんですけど、とても感動しました。ジョン・レノンが、オノ・ヨーコさんに影響を与えられて平和運動に向いていったというところが凄く描かれてまして、自分達のアートとか音楽に平和を乗せて表現していったという、まさに《平和のあり方》を描いている映画なんです。“平和”と言うと、「戦争反対!」とかっていうイメージがあると思うんですけど、そうじゃなくて、人と人とが平和を築いていくんだなっていうのがしみじみ伝わってくるところです。
2人がベッドインしている映像を公開して、世界中が衝撃を受けたのは、もう遥か昔だが、これはその当時作られた映画というわけではなく、つい最近の新作だ。
――ジョンの言葉とか、既に知られたもの以外にも出て来たりするんですか?
浅野: そうですね。白黒の映像も多いし、当時の貴重な映像も織り交ぜられてます。
――オノ・ヨーコさんもそこでメッセージを…?
浅野: はい、もちろん、語ってます。
■日本人が描くイラク、米国人が描くヒロシマ
そして3日目(7月20日)は、開場9時半、4本の作品が上映される。
【1】10:05~12:05
『六ヶ所村通信no.4~映画「六ヶ所村ラプソディー」のその後~』(鎌仲ひとみ 監督作品 2008年/75分)
青森県六ヶ所村に建設中の核燃料再処理工場を巡り、反対派だけでなく、「これが無ければ、村の生活は成り立たない」等の賛成住民の声も丹念に描いた話題作『六ヶ所村ラプソディー』の、その後を追ったドキュメンタリー。
【3】15:15~15:45
『イラク 戦場からの告発~アメリカ軍の撤退求めて~』(西谷文和 監督作品 2007年/32分)
これは、日本人の監督が、「劣化ウラン弾被害の実態」「チャイルドキラーのクラスター爆弾」「フセインとアメリカ」「急増する戦争被害者」「戦争あかん」と、細かいテーマごとに5つの章に分け、全32分と、本当にコンパクトに描いている。
浅野: アニメも交えてイラク周辺の戦争のからくりを非常に分かりやすく捉えてるんで、短いんですけど見ものです。
【4】16:15~17:41
『ヒロシマ・ナガサキ~白い光、黒い雨、あの夏の記憶~』(スティーヴン・オカザキ 監督作品 2007年/86分)
浅野: 日系米国人の方が監督をやってるんですけど、「原爆とは何か」っていうことを世界に広めるために、25年の歳月をかけてこういう映画を作ったっていう、凄い作品だと思います。
スティーヴン・オカザキ監督は、アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞にも輝いたことがある実力派だ。被爆者と、爆撃に関与した4人の米国人の証言を軸に描いている。
■各地に拡がる、上映会の動き
――毎年、不思議に思うんですけど、まずどうやって作品を集めて、一杯ある中から、どうやって選んでいるんですか?
浅野: 苦労するんです。(苦笑) 「これ、いいんじゃないか?」っていう作品を、実行委員に何本も持ち寄ってもらって。
――毎年、映画館でメジャーに観たことがないような作品ばかり出て来ますが、皆さんが最初に、自分の情報網でどこかから掘り出して来るわけですね。
浅野: そうです。1つ1つビデオを試写しながら観て、意見を出し合ってます。
――(映画祭が)終わった後の、お客さんの反応は、どうですか?
浅野: 毎回アンケートをやってるんですけど、「1日で価値観が変わった」とか「動きたくなった」とか、そういう感想を読むと、やっぱりやめられなくなりますね。
――実際に「動いた」っていう後日談は、ありますか?
浅野: 東京だけじゃなくて、富山の高岡とか、名古屋、大阪、千葉県の安房、沖縄の伊江島でも、平和映画祭っていう名前を付けて、各地方で実行委員を組んで上映するっていう、自然発生的な拡がりを見せてます。平和映画祭だけじゃなくて、食をテーマにした有機農業映画祭とか、そういったものもサポートしたりしてます。
――アメーバのように自己増殖してるんですね。これも1つの市民メディアの形ですよね。
浅野: はい、そうなって欲しいと願っています。
■入場料収入を支えに、着々と5年目へ
このコーナーで第1回東京平和映画祭を紹介した際、発起人のきくちさんに「この先どうなるのか」と聞いたところ、「黒字になったら来年も続けますが、赤字になったときのことは考えていません」と大変正直に語っていた。
――その後、財源は、大丈夫ですか?
浅野: いつもギリギリではあるんですけれど、毎回、参加者の入場料収入が、結構一杯来てます。(もう1つの財源として)オリジナルパンフレットを作って、当日、来場者に無料で配布してるんですが、その裏表紙に、1コマ9千円という形で募集して、広告を載せてるんです。1コマが3センチ×3センチで9(センチ)! (憲法)9条にかけてるんですけど。(笑)
――小さな正方形の広告スペースが、言わば賛助金集めの仕掛けになってるんですね。自分の好きなメッセージを載せていいんですか?
浅野: そうです。我々のデザイナーを使ってデザインしてもいいし、自分でデザインして頂いても結構です。
――1日で価値観が変わる人がいるのだったら、3日間続けて観たら、激変しちゃいそうですね。(笑)
浅野: 映画祭を始めてから、私もこれに人生を賭けている位(エネルギーを)費やしていますので、是非観に来て下さい! 場所は、東京・渋谷の国立オリンピック記念青少年総合センターの大ホールです。
参加申し込み方法や料金など、詳しくは主催者ホームページへ。