絶賛上映中!『Believe』撮影スタッフと語る【前編】

放送日:2006/2/18

トリノ・オリンピックでは日本勢の低調な戦いが続いているが、今回は、知的障がいを持った人達の熱い祭典である、スペシャル・オリンピックス世界大会の話題に着目する。去年(2005年)長野で開かれた同大会の模様を、同じく知的障がいを持った撮影クルーが撮った記録映画『Believe』が、今東京で上映中だ。この映画のユニークな“撮影者兼主役”9人の中から、3人にお話をうかがう。

■雪を蹴る音に挑み、総理への一発勝負に挑む

―クルーとして一番多く担当した仕事は何ですか?

川口弘樹(22歳・通称リーダー/眼のツケドコロ・市民記者番号No.20):
録音です。スキーの時に、選手達が滑ってる音を録ったのが思い出です。

―あのスキーでザァーッと雪を蹴る音?その録音は難しそうだなあ。だって、目の前をあっという間に通り過ぎちゃうじゃないですか。それをどうやって録るの?

川口:
それは、タイミングに合わせて素早く。

―目の前に滑っていくのに合わせて、マイクをヒューンと向けるわけですか。

川口:
はい。思いっきりブーンとやっちゃうと、録音もブーンと聞こえるといけないんで、ゆっくり移動していきながらやっていくんですよ。

―あ、急に動かすとマイクが風を切る音が入ってしまうから? その配慮は、プロ並みですね!

増満伸朗(30歳/市民記者番号No.21):
私は、インタビュアーを担当しました。

―一番印象に残ってるインタビューは?

増満:
小泉さん。

―小泉総理!あの映画に出て来る、首相官邸でのインタビュー場面だよね。あの時って他のメディアはどこも小泉さんにインタビューする時間が無かったから、増満君の独占インタビューでしたよね。他のメディアがうらやましがってなかった?

増満:
あれはアポ無しだったから。全然練習しないで、すぐにいっちゃうから。すぐ。

―あのシーンだけ見ると、さすがの増満君も緊張してる感じでしたけど。

増満:
寝ちゃうから、すぐ。眠たくなるのよ、大物に会うと。その前でつい、居眠りしたくなって。(でも)すぐ起きるから。だからサッとテキパキやらないと気が済まない。このままじゃダメかなあと思って、急遽一発勝負でやった。

―決まりましたね、一発勝負が。

和田勇人(19歳/市民記者番号No.22):
私は、音声担当でしたけど、色々な機材を使って、よく分からないくらいの機材を使ってましたから。

―機材って、皆使うの初めてだった訳でしょ?

■僕らは、映画を作る仲間なんだ

増満:
そうだよ、そうだ。覚えてる?夏合宿の時。

―合宿を皆でやったの?撮影のトレーニングのために?

川口:
はい。増満君は、テレビの世界に入っちゃって…。
増満:
すまない!

―ああ、あったね、そういうシーン。映画の中で、増満君がインタビューの練習が終わった時に、「フジテレビの○○がお伝えしました」とかふざけて…。

増満:
大爆笑。

―あの時の川口リーダーのダメ出し、怖かったよね。「ダメ!」って。

増満:
リーダー、あれ、覚えてたのか!?
川口:
覚えてる。
増満:
覚えてるなよなァ!

―質問!あれは何で「ダメ」なんですか?

川口:
僕達は、何のためのクルーなのか。テレビでふざけるためではない。映画(作り)で期待(されてる)仲間で、真面目にやらないといけませんので、テレビと違った《映画》をお客さんに観せてあげたいという気持ちがあって…

―映画を観に来てくれてるお客さんのことをちゃんと考えろ、と。

川口:
そうです。映画はテレビじゃないんで。その映画を観に来てくれるお客さんのために、僕は増満君がしてること、反対(と)言ってるんですよ。

―プロ根性だね!「ダメ」って言われた瞬間のあの増満君の顔は、すごくショボンとしてたけど。「いいじゃん、それぐらい」とか言ってたよね。でも結局、川口リーダーに言われた通りにやり直したんだよね。

増満:
そうだ、そうだ。
川口:
その2人のケンカをするシーンが、ちょっと映画に出てしまったんだけど…
増満:
ボケとツッコミ。
川口:
ここで笑いを取るなっつーの。

―ハッハッハ!和田君、こういう厳しい場面っていうのは、あの映画に出て来る以外にも、製作過程でたくさんあったの?

和田:
そうですね。増満君だけじゃないですね。ちょっとしたことで、すぐケンカになってしまうことも度々なんですね、いろいろありまして。まあ同じクルーですから、すぐに仲直りできました。

―まあ9人いたら、そりゃ意見が合わないこともあるよね。そういう時の仲直りの仕方っていうのは、どうやって?

和田:
そうですね、何か先のことを楽しく言い聞かせる。もう、それしかないですね。

―次の目標とかを言うわけか。そういう役は誰がやるの?

和田:
まあ、その時にひらめいた時に言うんですね、色んな人が。

―こうして、段々と出来てきたのが、この映画というわけですね。

■華麗なるアスリート歴

―今回は撮影クルーだったあなた達も、もともとはあの映画の舞台と同じ、スペシャル・オリンピックスのアスリートなんでしょ?種目は何ですか?

川口:
陸上とか。
和田:
僕は水泳とボウリングだけ。
増満:
僕も水泳とボウリング。あ、スキーもやってんだ。
川口:
僕は数え切れないくらい沢山のスポーツをやってます。

―もともとスペシャル・オリンピックスは、4年に1回のオリンピックと違って、日常的にいつもいろんな所で活動してるんでしょ。その一環として、去年開催された長野大会のような世界大会があったりするわけで。5年前(2001年)のアラスカ大会の時は、日本選手団の劇的な活躍ぶりを、このコーナーでも詳しく紹介しましたよ。皆さんは、大きな大会に出た経験は?

増満:
ボウリングの全国大会があって、KONISHIKIさんや有森裕子さんと最初に会った。
和田:
世界大会じゃないんですけど、ちょっと似たような感じで、スペシャル・オリンピックスの夏季ナショナルゲームを、東京の調布でやったんですね。それに私が水泳のアスリートとして参加しました。

―結果はどうでしたか?

和田:
そうですね、1位ですね。金メダル獲りました。

―ホント!金メダルは今も家にある?

和田:
ありますね。

―ああ、持ってきてもらえば良かった。

川口:
僕は外国ですけど、アメリカのノースカロライナ州で陸上の大会があって、私は1500メートルの種目で走りました。
増満:
リーダーやるじゃん、外国! 英語はどうだったの?

―グッド・クエスチョン! さすがリポーター!

増満:
英語、苦手なんでしょう?
川口:
何を言ってる…。
増満:
リーダー、大丈夫か? 照れくさそうだけど。

■僕らにとって“ビリーブ”とは…

―では、3人に訊きます。『Believe』っていう映画がどんな話か、説明してもらえますか?

和田:
笑い、涙、それぞれ感じますよね、観て。“Believe”っていうのは「信じる」っていう意味ですよね、日本語で。ですから、「僕達はここまでやってきたから、信じて欲しい」っていうテーマで、映画を観る人達が、こういうことを障がいがある子でも出来るから、他の別な子でも頑張れるような、励ましなんですね。

―増満君流に説明すると?

増満:
私がたくさん出てる映画。

―それは言えてる(笑)。

増満:
私がやってるインタビューが一番多い。

―リポーター役だからね。あれは、普段から練習してるの?

増満:
アドリブだけ。

―テレビのアドリブを見て練習してるの?

増満:
そうそうそう。

―ホントに?

増満:
テレビを見て勉強して、それで練習するんですわ。

―それであんなにポンポン出るんだ。だって、増満君のしゃべり、映画の中でも面白いもんね。(映画館の)観客席からも、しょっちゅう笑いが起きるもんね。
川口君がこの映画を宣伝するなら、どういう映画ですか?

川口:
数多くの人達に、「これがスペシャル・オリンピックスだ」と、「僕達はこういう団体だ」っていうのが分かりやすくするために、この映画を観て欲しいんですよね。できたら、数多くの皆さん、ラジオを聴いてるリスナーの皆さんが、映画館に足を運ぶことがあれば、是非観に来て欲しいです。

この映画『Believe』は、3月中旬まで東京・渋谷の『シアター・イメージフォーラム』で上映中。その後も、全国で上映予定だ。

3人とのトークは、来週も続編をお伝えする。

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