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人の話を聴く」空気を持とうよ!
栃木で幼い兄弟が川に投げ落とされて殺された事件の取材に行った。こんな悲劇は、本当に今度こそ、金輪際おしまいにして欲しいから、敢えて書く。
「なぜ事前に防げなかったのか」とメディアは児童相談所を叩き、児童相談所側はただひたすらに頭を下げ続けるという毎度おなじみのパターンが、今回も展開された。本気で再発防止を考えるなら、最も必要なのは、「その時点その時点で、なぜ判断を誤ったのか」を検討する事だ。ところが、この雰囲気の中では、例えば「家庭訪問しなかった理由」を児童相談所側が説明しようものなら、それは全て“責任逃れの言い訳”と受け止められてしまい、ますます批判の火に油を注ぐ事になってしまう。それを恐れて失敗者側は一切の≪説明≫を行わず、頭を下げ続けるという構図になってしまう。これではいつまで経っても「なぜ失敗したのか」を、失敗者から学べないではないか。
一方、今回の事件では、幼い兄弟のアザに気づいて警察に通報し、児童相談所が動き出すきっかけを作った近所の商店主がいた。また、幼い兄弟がこの地に引っ越してくる前に住んでいた地方自治体では、きちんと行政サイドによる家庭訪問も行われていた。こうした、事件の予防に直結する≪学ぶべき点≫についてもまた、その実践者達はやはり多くを語りたがらない。「こんな悲痛な事件で、自分だけ“いい子”になるわけにはいかない」「自分たちの例を紹介する事で、地元の児童相談所を相対的に悪役にする事は避けたい」というのが、その理由だ。
こうして日本社会は、この事件の中の“教師”からも“反面教師”からも、十分な教訓を学べずに、ただ嘆いたり憤ったりするだけで、やがて忘れ去ってしまうのだろう。失敗した人の説明を「弁明」と拒絶したり、お手本となる人の説明を「ええカッコしい」と反発したりする世間の空気が変わらなければ、この繰り返しから脱することはできない。