今年最注目の新人議員・真山ゆういち氏に聞く

放送日:2007/12/29

2007年最後のこのコーナーは、今年初当選して誕生した、数ある新人政治家の中から、私が一番注目する方にご登場いただく。4月の統一地方選で調布市市議会議員になった、真山ゆういちさん。日本テレビ『おもいッきりテレビ』の元キャスターとして、「情報特急便」のコーナー等で活躍されていたが、今年2月末に番組を辞め、地方政治の世界に転身した。

■全く考えていなかった、政界転身

――世界各地を飛び回っていろんな取材をされてきたと思うんですが、そういう濃い人生の中でも、今年は激動の年だったのではないですか?

真山: そうですね。私はもともと、記者でテレビの世界に入って、それから喋る仕事に転身したんですけど、その時が私にとっては大転換だったわけです。それに次ぐか、もしかしたらそれを超える転身じゃないかなと、自分ではそんな気がしてます。やはり、それほど周りがガラっと変わって、まだ面食らってますね。

――真山さんほど全国的な知名度の方だと、当然、この夏の参議院選挙でも悠々当選できたと思うんですが、(これは耳にタコの質問だと思うんですけど)なぜ国会でもなく都道府県議会でもなく、市議会を選ばれたんですか?

真山: 実を言いますと、こういう仕事をきっかけにして、政界へ転身しようとか、全く考えてなくて。たまたま、地元でかなり親しかった市議会議員の方が引退したいという話を聞いて、それで、(後継者として)どうだろうって話があって。最初は、全然そんな気無いよって話だったんですが、どうしてもって言われまして…。
 ふと思ったのは、キー局の仕事をずっとやってますと、国会の動きとか、国会議員が何してるかというのは、東京で聞きかじったり見たりしてるから、自分で分かってるつもりだったんです。で、地方のことになると、これは、何をしてるか全くわからない。つまり、今までやってたのは、非常に大きなメディアでだったんですけど、小さな世界に1回入ってみて、一体どうなってるのかっていうことを見てみたいなって気持ちが強かった。それがやっぱり、地方議会に飛び込んだ一番大きな理由になりますね。

私もTBSを辞めて以来、市民メディアという方面にすごく興味を持ち、「足元から、地域から発信しようよ!」ということをライフワークに位置づけている。だから、「なんで市議会なの?」というよりは、「よくぞ市議会へ!」という気持ちで、真山さんの転身に注目していた。

真山: やはり地域で活躍してたり、一生懸命地道にやってるものを採り上げるミニコミって、なかなか日の当たらない部分がありますよね。そういう地域活動をちょっとやってみるのもいいかなという気持ちはありました。

■握手を握り返してもらえない不安に駆られて

――でも選挙っていうと、スタッフとか必要じゃないですか。どうやって人員を組み立てられたんですか?

真山: とにかく突発で決めたような感じがあったでしょ? ですから、何をどうやっていいのか、わけが分からなかった。

――AD(アシスタント・ディレクター)もいませんしね。(笑)

真山: ええ。テレビの仕事で言うと、ほとんど(いつも)周りにスタッフがいるような仕事だったんです。それがいきなり、自分で全部やんなくちゃいけないのかなって気がしました。ただ、私の場合は幸いなことに、引退する議員の方がいらっしゃって、その方が「とにかく任せとけよ。選挙が済むまで何とかやってあげるから」と言われたんでね。とにかく、1ヶ月ちょっとの間に、初めてのポスター作り、事務所を開く、あいさつ周りをする。常にハードでしたけど、あっという間に済んで、楽しかったですよ。

――出馬した市議会議員候補の中でも、多分一番しんがりぐらいに出馬表明されたんですよね?

真山: そうです。立候補して選挙運動して、非常に不安に陥ったんです。たしかに、私のことを知っててくれる人はいっぱいいるけど、それがすぐに票に結びつくかどうかっていう不安に駆られたんですよ。やっぱり、ひとつの調布市っていう小さな地域ですし、大体(各候補ごとの)支持者ってもう決まってる。

――浮動票の余地が大きい国会より、むしろ難しいかもしれませんね。

真山: これ分かるの、握手なんですよ。握手をした時、「がんばってくださいね!」と言ってほんとに票を入れてくれる人は、わりと手をしっかり握り返してくれる。ところが、こっちが一生懸命握手しても、それに応じてはくれるんですけど、握り返してはくれない人がやっぱり多かった。私、調布在住9年目ですから、いわゆる新住民なんですよ。この市議会議員選挙っていうのは、地縁血縁、親類、知り合い、それですべてもう票が固められてるんで、「これで、ここへ自分がどこまで食い込めるのか?」っていう不安に駆られて。それが、「もしかしたら何とか行けるか」と思ったのは、やっと投票日2日位前です。

――それなのにダントツのトップ当選、9346票。これ、調布市議会史上最高ですか?

真山: ええ、聞くところによりますと、「こんな数字は出たことない」と。最高でも3000、4000位だから。

■大局観より、地元の世話役

――実際、議員生活をスタートされて、戸惑われました?

真山: 選挙戦で味わった思いは、やっぱり今もまだ味わってます。市議会議員っていうのは地元で長年やってきて、地元の事を知り尽くしてて、そして議員になったという人が多いし、地元でいろんな仕事をやってる方も多いから、情報量がまったく違う。私たちの報道の仕事で言うとお分かりかもしれませんが、どれだけ情報を自分に集められるかっていうのが勝負でして。

――確かに、全国ニュースの情報をいくら持っていても、市政では役に立たないですね。

真山: ええ。地元の「あそこのおじいちゃんが幾つになったよ」とか、「あっちのおばあちゃんが亡くなられたよ」とか、私にとってはもう、全くちんぷんかんぷん! そういう事で繋がってるんで、これから仕事をやっていく上で、とにかくどうやって自分の情報を集められるルートを築くか、人脈を作るかっていうことが、ひとつの大きなテーマです。
 後から分かったんですが、今までの地方議員って、《地元の世話役》なんですよ。その市の政治をどうするかとか、街をどう作るかっていう大きな事よりも、日々の事、毎日の事。「あそこの道の飛び出した所が危ないからカーブミラーをつけてくれ」とか、「あそこの道路に穴ぼこがあるから、あれ早く直せ」とか、そういう事が日常の中で一番多いですね。

――その感覚を国会議員までそのまま引きずっているから、なかなか国会が政策論争レベル以下の所でグズグズしているのかもしれないですね。

真山: そうですね。

■新住民の期待は、長期展望

真山: 私は今回、自分で選挙をやってみて、やっぱり地方の選挙の在り方も、少し変えたいと。

――地縁血縁に頼るだけじゃなく、政策でちゃんと投票してよ、という?

真山: 私の場合は新住民ということで、9000票余りっていうのは、多分その新住民の方が支持してくれたんじゃないかなと、そんな気がしてるんです。もちろん、地元の地盤を譲ってくれた市議会議員の方の票っていうのもあると思うんですが、大多数は新住民。で、そういう方たちから言われて一番嬉しかったのは、「地元の繋がりから来る事をやるよりも、調布市全体の事を考えるような街づくり、政策、ぜひそういうものを考えてやって下さい」と。これは私にとってはすごく励みになって。地方自治も地元密着も大事だけど、やっぱり密着の仕方を新しい形に変えていかないとダメかなと感じてます。
  調布の場合は、京王線という私鉄が走ってるんです。調布駅が調布市の中心にあるわけです。この調布駅を中心に今、京王線の線路を地下に潜らせるということをやるんです。私はこれに大賛成で。高架にすると日照権とか騒音とか、沿線の人と(の間に)いろんな問題が出ます。ところが、(線路を)地下にするとそういう問題が無い。しかも、地下化した後の線路の敷地は、膨大な空間として残る。これは新しい街づくりには非常に大事なことです。こういう事を、将来やりたいなぁと。調布市の将来像みたいな街づくりを、私の一番のテーマにしてます。もちろん教育問題、福祉問題、いろんな事も抱えてます。

――たとえば、国会レベルで論じる教育問題と、市議会で論じる教育問題と、どう違うんですか?

真山: やっぱり一番大きいのは、調布の場合は人口増によって、お子さんが増えるんですね。子どもが増えると、まず保育園が足りない。それから小学校が足りない。そこへ、今度は先生が必要になる。ハードの部分を作らないと収容しきれないわけですよ。ところが、「今は増えてるけど、じゃあ10年後20年後、50年後になってもこの傾向は続くのか?」って、よく言われるんです。ある時突然、お子さんっていうのは増えなくなるときがあるわけですよ。一番の心配は、そういうとき、「その広げちゃったものをどうすんだ?」と。そういう事も考えなくちゃいけないわけで、当面の問題をどうするかっていうことと、長期的にどうするかっていう2つを考えながらやらなくちゃいけない。

――まさにそういう長期的な視野に立つ部分を、新住民の皆さんが「真山さんが担ってよ」って言って下さったということでしょうね。

真山: そうでしょうね。

■正解だったか、まだ分からないけれど…

――選挙のときに、「ニュースの力を調布のまちに!」というキャッチフレーズを掲げていましたが、ニュースの力って活かせていますか?

真山: 私が市議会で何をやりたいかという1つには、これから地方都市も、自分のとこだけに閉じこもってちゃダメで、自分の街はどういう街なのか、どういう事をやってるのかを《発信》して行かなきゃいけないんじゃないかって思ってるんです。宮崎県の東国原知事は、まさにそういう事を実践してやってる方じゃないかなと。やっぱりそういう事を、私が機会あるごとに言っていくのが良いのかなと思ってまして。それが自分に課せられた課題だと思って、積極的にやって行きたいなと思ってます。

――今振り返って、この転身は良かったですか?

真山: まだ分からない、模索中ですね。サラリーマンのときは、私はもう自宅と駅の間を往復するだけで、地元に関しては通勤路以外は道が分からなかった。けれども、この道を行けばこんな所に出るとか、ここにこんな人が住んでるとか、いろんな事が分かって。そういうものを財産にして、自分がこれから地方政治の中で何が出来るかという可能性を、まだ期待しながらやってるんです。やはり転身した以上は、積極的な評価が出来る仕事をやって行きたいと思ってます。実際にやってみて、地方議員というのは力が無いっていうことも分かりましたので、自分がどれだけ力を発揮できるかというのは、これからです。

「地方の時代」とはずっと前から言われているが、こうやって本当にその現場に身を投じ、そこでやって行くという人はまだまだ少ない。真山議員には、来年も再来年もその次も頑張ってもらいたい。

――そこで力を発揮して発信されて、それを全国の地方議員の人達が見たら、また励みになりますよね。

真山: そうですね、ぜひそうなって…くれたら、なれたらいいなと思ってます。

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