下村が1年前からずっと注目して待っていた、新しいタイプのインターネット新聞『JanJan』が、先週土曜、ついに創刊された。スタートは、テレビ放送開始50周年の2月1日、午前8時8分。
今日は、この歴史的瞬間を作り上げた一人、編集部の常勤スタッフの、山本千晶さんをスタジオにお呼びした。
−ジャンジャンの「ジャン」は、どういう意味なんですか?
- 山本:
- 最初の「ジャン」が”Japan Alternative News”で、その後に” Justices And New-culture”、その二つの間に”for”が入ります。”Justices”が複数になっているのは、文法的には間違っているんですが、正義は一つだけではなくて、私達の認識する正義は色々あるんだ、ということを表しています。
これを日本語に訳すと、「正義と新しい文化の為の、日本の新しいニュース」と大仰な意味になってしまうが、それ以外にも半鐘の音の意味もあるそうだ。世の中に対して、これで良いのか?と問いかけをする警鐘の「ジャンジャン」、というわけだ。
−今では、どこの新聞社もインターネット版を出していますが、それらとの違いは?
- 山本:
- 普通のインターネット新聞は、専門の記者が記事を書いています。ですが、このJanJanでは、誰でも記事を書いて記者になってもらうことができるんです。
−そうすると、記事の信頼性はどうやって確保するんでしょう?
- 山本:
- まず、頂いた記事は編集部で一度目を通します。そこで、確認が取れなかったものは「卵の記事」としてそのまま掲載します。その中でも、まだ公開するには危険な部分などがあれば、黒塗りで掲載することになっています。
そして、黒塗りの部分は、事実の確認が取れ次第減って、きちんとした記事へと変わっていく。まさに、見ている人の前で記事が「育っていく」のだ。
−このアイデアは、誰が思い付いたんですか?
- 山本:
- 元々は、韓国のインターネット新聞「OhMyNews」を見習って、「ジャンジャン」を立ち上げました。「OhMyNews」は、2000年に4人で発足したもので、今回のノ・ムヒョン大統領選挙にも影響を及ぼしました。市民記者は、発足当時で700人、現在は2万人もが登録しています。一日の訪問客数は200万人で、大手新聞を超えて「最も影響を及ぼすメディア」の上位に食い込んでいます。
そのような意気込みを持った「JanJan」の、創刊の言葉を見てみよう。
既存のマスメディアは、プロの記者が政界や官界、経済界などから提供される情報をもとに、ニュースを書いています。“上から下へ”の性格が強いニュースです。 『JanJan』は、これとは逆に、これまで読み手の側にいた人が、生活や地域に根ざした ニュースを書きます。“下から上へ”のニュースをたくさん発信することによって「本物の 言論」を創り出そうという挑戦です。
では、実際の画面を見てみよう。http://www.janjan.jp/ に行くと、左側がジャンルに分かれ、真ん中には記事の見出しが並んでいる。
「卵の記事」を見ると、第一号は「みんなどこかが疲れてる?自分で自宅でプチ癒し」。編集部も知らない、全くの一市民の方が書いた記事だ。
−これをニュースとして取り上げる場合、どのようにするんですか?
- 山本:
- 「卵の記事」から本記事にする場合は、編集部でよりニュースらしい文章にします。ですが、そのままで十分に面白い記事は、ずっと「卵の記事」として残しておく場合もあります。
−他にはどのようなページがありますか?
- 山本:
- いくつかのカテゴリ別にページが分かれているんですが、一つの記事が複数カテゴリにまたがることが良くあります。今後検索機能を持たせて、どの記事でもまんべんなく見ていただけるようにしたいと思います。
また、JanJanが目指す「市民による本物の言論」を実現するために、ニュース発信だけではなく自分の意見をしっかり言いたい人向けに、コラム欄を充実させたいと思っています。
インターネット記者になるためには、ホームページから氏名、メールアドレス等の必要事項を入力し、数分で登録が完了する。基本的には全て署名記事のため、記事には本名が付せられるが、特別な場合はペンネームでの投稿も可能だ。
−画面の右には、海外新聞、国内新聞というコーナーもありますね。
- 山本:
- 海外新聞のコーナーでは、英字・独字の新聞からJanJanの視点でトピックを選び、こんなことがかいてあるよ、ということをソース付きで掲載しています。また、国内新聞はその日のニュースが20秒くらいでざっと分かるように、毎朝7時に更新しています。
先程から何度か登場している「編集委員」は、市民からの記事をチェックするという大変な責任を負っている。その中のリーダー格・竹内謙さんは、このようなインターネット新聞を日本で始めよう、と1年前から準備していた人。朝日新聞記者から鎌倉市長へ当選し、7年前、市役所の記者クラブを廃止して、論争を巻き起こした人でもある。昨年2月に市長を辞め、次なるメディア改革としてJanJan立ち上げに取組んだ。
- 山本:
- 他にも、編集委員として、『PLAYBOY』副編集長の川口智子さん、行革国民会議事務局長の並河信乃さん、市民運動全国センター代表世話人の須田春海さんなどがいらっしゃいます。
行革国民会議とは、臨調、行革審会長を勤めた故土光敏夫氏を中心に設立された民間団体のことで、並河氏はその事務局長をずっとつとめている。また、須田さんも、市民運動を長くやってる人の間では知らぬ人はいない、大御所的な存在だ。
−インターネットというから若者の動きかと思ったら、中心メンバーは、竹内さんも含めて、しっかりした年齢の人ばかりなんですね。
- 山本:
- ベテランが足元を固め、実際に手足となって動いているのは若手、という形になっています。若手とベテランの間で、議論がぶつかっていることも良くあります。
−これからの更新ペースは?
- 山本:
- まだ立ち上げたばかりですので、今のところは1週間に2〜3回です。トップニュースの方には、JanJanの方向性をしっかり形作れるようなニュースを掲載していきたいと思っています。
−運営資金はどうしていますか?
- 山本:
- 今のうちは、意義を感じて出資してくださった方々の初期投資だけで運営しながら、いいものを作ることを第一に考えています。そのうち、回転資金についても考えなければならない時期が来ると思います。本家の韓国では、運営のほとんどを広告収入でまかなえるようになって来たそうです。
最後に、「創刊の言葉」からもう1つご紹介しよう。
市民の皆さん、ニュースを書くことは楽しいことです。多くの人々に読んでもらうことはうれしいことです。それが社会を変えるきっかけになればもっと大きな喜びを得られます。
今迄にも、市民メディアについては度々お伝えしているが、そこにまた一つ、楽しみなものが加わった。数年後には、韓国並みの巨大ネットワークに育つかどうか、大いに注目したい。