骨髄移植のリミット迫る、晃太君の場合

放送日:2003/01/11

白血病患者へ健康な骨髄液を移植するドナー(提供者)を登録しておく為に、「骨髄バンク」というシステムがある。先日、この登録者が累計20万人を超えた。だが、骨髄移植を待つ側としては、この数字は「まだ20万人」というところ。登録ドナー全員を調べても自分の骨髄と型が合わない(つまり移植できない)患者は、全国に現在約2000人もいる。

その2000人のうちの1人として、今回は名川晃太君(6歳)のケースをご紹介する。晃太君のお父さんに、電話でお話を伺う。

名川:
昨年の8月から、風邪のような症状を繰り返していました。1ヶ月くらいこの症状を繰り返した後、血液検査をしたところ、すぐに急性リンパ性白血病という診断が下されるくらい症状が進んでいました。
もともと元気な子供で、6歳までは病気らしい病気もしなかった子なので、知らされたときには本当にガーンという感じでした。お陰様で、抗ガン剤にうまく反応してくれて、現在はとてもいい状態で推移しています。薬の副作用はありますが、いたって元気です。点滴を繋ぎっぱなしなので、行動が制限されてしまうのが少し残念ですが。

−今年のお正月はどうされましたか?

名川:
病院で家族全員、晃太の病室で過ごしました。去年のお正月は、こんなことは全く考えもしませんでしたが。

−病状が進行していき、骨髄移植手術が間に合わなくなってしまう「タイムリミット」があるそうですね。

名川:
そうなんです。白血病にも色々なタイプがあります。まずは慢性と急性があり、晃太の場合は急性の白血病です。さらに、急性の中でも特殊な染色体を持ち、再発率の非常に高い種類なんだそうです。この種類の白血病は、早い段階で骨髄移植をやるべきなんだそうで、お医者さんには3月くらいが理想だと言われています。 ただ、検査などの準備がありますので、ぎりぎりで2月半ばくらい、出来れば今月いっぱいがドナーの方が見つかる期限です。しかも、これは個別検査で白血球の型が分かっている方の場合ですから、これから型の調査から始めて…となると、時間はかなり限られています。

−既に、多くのお知り合いの方が協力して下さったそうですね。

名川:
はい。200人ほどの方に協力していただきました。その前には、骨髄バンクにドナー登録していただいている16万人分とも全員の適合性を調べましたし、海外のバンクも検索したのですが、残念ながら晃太の型と一致するものはありませんでした。

−現在、ご友人がホームページなどを使って、骨髄バンクへの登録を呼びかけているそうですね。

名川:
「はい。皆様の反応も良い、と思っています。骨髄バンク登録をしたよ、ということを思わぬ所で聞いたりもしています。
本当に、皆様の力で生きているんだ、ということを身にしみて知らされました。ただ、それが子供の病気を通じて分かったのがちょっとつらいですが。

―具体的に、骨髄バンクに登録するためには何をすれば良いんですか?

名川:
登録するには、最寄りの血液センター、献血センター、保健所などで、10ccの採血をしていただくだけで結構です。ただ、バンクに登録するには、その後の骨髄提供についても理解して頂かなければならないので、難しい部分もあります。

骨髄バンク側では、常に制度の改良を進めている。今月から、適格性検査の基準を変更して、ドナーの健康チェックを厳格にして安全性を高めたり、来週14日からは、待っている2000人の患者さんやその家族の問い合わせに対して、マッチング作業の進捗状況を個別に知らせるなど、出来る限りの情報公開を進めている。
だが、目標のドナー人数にはなかなか届かないのが現状だ。新規登録者は月当たり1500〜2000人くらいで推移している。

−晃太君は、自分の病気について知っているんでしょうか?

名川:
病名をストレートには話していませんが、状況については話しています。それをレンジャーものの様に例えて、悪の血液軍団が晃太の体をいじめて、血液工場を壊している、それを新しく建て直そう、という話をしました。
本人も、頑張って戦う、ということで、認識はしているようです。ただ、負けると僕は死ぬの?と言われたときには、言葉が無くなってしまいました。『そうなんだ。だから皆でやっつけよう』と答えましたが、そんな時でも、両親を励ましてくれることもあり、ウルウルっと来てしまいます。

−10ccの採血をして、ある程度型が合うことが分かったとしても、その後が大変なんですよね。

名川:
そうです。提供して下さる方の健康も大事なので、チェックを念入りにやっていただくことが第一にあります。これにも時間がかかりますから、タイムリミットが狭まってしまうんです。

晃太君のお父さんは、直接晃太君への骨髄提供を呼びかけるだけではなく、すべての同じ立場の人達のために、骨髄バンクへの登録を呼びかけている。しかし一般にこのようなケースでは、「お前の家族のためだったら知り合いだから協力するけど、バンク登録までは…」という反応も少なくない。適合者さえ見つかれば、というわずかな確率に期待をかけて、今この瞬間、晃太君ら2000人の人達が、じっと朗報を待っている。

骨髄バンクの問い合わせ先は、0120-445-445(骨髄移植推進財団)。

▲ ページ先頭へ