まずは、前回このコーナーでご紹介した「東アジア環境市民会議」について、結果報告をさせて頂こう。東アジア環境情報発伝所の廣瀬代表に伺う。
−会議はうまく行きましたか?
- 廣瀬:
- 顔と顔を突き合わせて、かなり良い情報交換が出来たと思っています。皆さんが疑問に思われていた『中国にも環境NGOなんてあるの?』という点についても、ホームページなどで新しいNGOがどんどん誕生していることを紹介して頂きました。
言葉についても、資金の制約で完全な同時通訳、というわけには行きませんでしたが、色々な方のおかげで、英語を全く排除した東アジア語だけの会議にすることが出来ました。
−今後の共同作業のアイデアで、黄砂の一斉調査の話がありましたが?
- 廣瀬:
- 国際会議の難しいところで、何分皆さんが全権委任されてきたわけではないので、調査の方法などが決まらず、継続審議ということになりました。ただ、今後も共同で出来る事を探っていこう、という方向性を一致させることはできました。
さて、今週の本題は、来週水曜日に行われる「田んぼ環境シンポジウム」について。先日このコーナーでお伝えしたNPO団体「めだかの学校」が主催する、全国会議だ。科学者だけではなく、農家の方から子供達までが一年間取り組んできた「田んぼの生き物調査」の結果が、ここで発表される。農水省や環境省の後援も付き、省の局長も発言するという、国まで巻き込んだ田んぼ学会である。
今回は、「めだかの学校」顧問の岩渕成紀さん(宮城県立田尻高校教諭)に、電話でお話を伺う。
−「田んぼの生き物調査」とは、どのような目的で行ったのでしょうか?
- 岩渕:
-
アジアモンスーン型の環境というのは、田んぼでの稲作に最適なんです。日本では2500年以上も稲作が行われてきていますし、連作障害もないという、最も優れた穀物なんですね。
しかし、かつては農村地域に沢山いて、私達も取って遊んでいた動植物が、非常に危険になっています。それを支えていたのは水田なんです。
実は、その周辺のシステムはよく分かっていませんでした。例えば、アマガエルは害虫といわれるイネミズゾウムシなどが主食です。ですが、これらの調査、モニタリングが全然されていなかったんです。
また、害虫の発生についても、農薬を使った方が一時的に発生を抑えられても、結局は減農薬の方が良いという結果が出ています。昔の調査はここまでで終わっていましたが、結果として害虫を食べるクモの発生が関係していることが分かりました。つまり、周辺生物の調査をすることによって、原因が判明したわけです。
田んぼの周りの生物連関は、このように複雑に絡み合い、関連が途切れることはありません。この辺りの調査が過去に行われなかったために、今回の調査を行ったのです。
−調査の結果はどうでしたか?
- 岩渕:
- 例えば、今迄はカエルがいる・いないという概念だけでした。ですが、今回は「アマガエルはどのくらいいる?」ということを、子供に畦を一周してカウントしてもらいます。それを、田んぼの種類によって分類すると、明らかな差が出てきます。このように、田んぼの種類と生き物の分布を、細かく調査しました。
さらに、田んぼの環境も調べました。水環境を取ってみますと、田んぼの水には非常に多くの酸素が溶けこんでいます。また、PH値を調査すると、日中にはPH10にもなり、まさにアルカリイオン水ですね。これらの、誰も調べてこなかったことをモニタリングして、自然の繋がりを調査してきました。
−自然を守る取り組みとしては、どのようにすればよいでしょうか?
- 岩渕:
- 例えば、冬場も水田に水を張っておくことは、水の生き物にとっても、水鳥にとっても非常に大事なことです。ですが、常に水を張っておくにはコストが掛かります。
これに対して、韓国では補助金を出し、また中国では農地自体を国が買い上げ、冬場に水田に水を張っておくことを進めています。ドイツにも、同様の助成制度があります。日本では、このような直接支払い制度が出来上がっていませんね。
田んぼは単なる米の生産場所ではなく、自然と共生するためにある、ということを理解していただきたいですね。
−来週のシンポジウムには、まだ参加できるのでしょうか?
- 岩渕:
- はい、一人でも多くの人に聴いていただきたいと思っています。「田んぼの生き物に聞く日本の未来」をテーマにしておりますので、興味のある方は是非、「めだかの学校」事務局(03-3569-2312)までお問い合せいただきたいと思います。