今週のニュースと言えば、何と言っても外務省のゴタゴタと、雪印問題。この2つの事件には、実は根っこの所で共通項がある。今朝は、そこに眼をツケて、突破口を考えるためにゲストをお呼びした。 薬害エイズ訴訟で皆さん御存じの川田龍平さんと、彼が代表を務める『人権アクティビストの会』の中心メンバー・及川健二さん。
外務省と雪印と、薬害エイズ? 一体どこに接点が有るの? ―――いやいや、大有りだ。
外務省騒動は、田中外相・野上次官・鈴木宗男議院運営委員長の各関係者が皆辞めたけれど、結局真相は何もわかっていない。だが、真相を知っている当事者は、外務省内に確実にいる。その人達が証言さえすれば、「嘘つきは誰だ」なんて派生問題の方でモメずに、最初から本質を議論することが出来たはずだ。
社長が辞めた雪印食品についても、全く同じ。西宮の冷蔵倉庫会社の社長さんが勇気を持って声を上げなければ、雪印食品内部で事情を知る社員達は黙り続け、今でも我々は、嘘の表示の食品を、だまされて食べ続けていただろう。
―――そう、両方の件に共通する問題の根源は、《身内がおかしい事をしていても、内部から告発しないで皆で隠す、日本の組織の体質》にアリ!ということになる。
ならば、どうすればよいのか? 「もっと皆のために、こういうことは勇気を持って発言しましょう!」などと《べき論》を謳ったところで、現実にはなかなか言い出すことはできない。何か内部告発がしやすくなるような《制度》は、この世にないものか・・・と探してみたら、あった! 米国の『ホイッスル・ブロアー保護法』と、英国の『公益開示法』。そしてそのアイデアを日本社会に導入しようと今熱心に活動しているのが、川田龍平さん達だったのだ。
- 及川:
- 日本の体質として、情報に関して三つの悪い部分があります。・「隠す」、・「ばれても責任をとらない」、・「内部告発した人を処罰する」です。
このうち、「隠す」という部分については情報公開法で対応できます。しかし、情報公開をしても内部告発が出てこなければ、深い情報は分からないんです。
田中真紀子さんが、委員会で鈴木宗男さんとの問題について語るときに、「重大な決意と覚悟が必要だった」と述べていますが、これは内部告発者も同じです。自分の首が切られるのではないか、家族をこれから養っていけないんじゃないか、という覚悟を持たなければ、情報を発信できないという状況があるんですね。 - 日本の体質として、情報に関して三つの悪い部分があります。・「隠す」、・「ばれても責任をとらない」、・「内部告発した人を処罰する」です。
- 川田:
- 例えば、多くの人の命に関わる問題が進行しているという事実について、会社の内部で知っている人は必ずおり、その人が「危険だ」ということを公開しないために、結果として社会的被害が繰り返し起こっています。このような事例は、アメリカやイギリスなどでも次々と起こっているため、内部告発者がヒドい眼に会わないよう守る法律が作られてきました。日本でも、同様の制度がこれから絶対に必要になると思われてきています。
特に僕は、危険だということを知っていて血液製剤を使わされてきました。そのことによって薬害エイズの問題が引き起こされてきたのです。民事裁判の方は和解しましたが、誰に責任があったのかという真相解明という部分ではいつもフタがされています。危険だと分かった時点で情報公開していく、そういう意味で情報公開法プラス『公益開示法』が必要だと思います。名称が分かりにくいので、日本では『不正告発者保護法』などの名前が良いのでは、と考えています。 - 例えば、多くの人の命に関わる問題が進行しているという事実について、会社の内部で知っている人は必ずおり、その人が「危険だ」ということを公開しないために、結果として社会的被害が繰り返し起こっています。このような事例は、アメリカやイギリスなどでも次々と起こっているため、内部告発者がヒドい眼に会わないよう守る法律が作られてきました。日本でも、同様の制度がこれから絶対に必要になると思われてきています。
−“ホイッスル・ブロアー”ですから、直訳すると、ホイッスル(笛)を吹く人ですね。つまり、「危ないことをやろうとしてるぞ、ピリピリピリーッ!」と警笛を鳴らしてくれた人を守ろう、ということですね。
実際には、どうやって「笛を吹いた人」を守るんですか?
- 川田:
- まず、告発した人が解雇されないとか、昇給・出世を妨げられないとか、職場上の不利益を被らないようにしていくことがあります。さらに、アメリカの場合には報奨金制度もあって、不正を告発したことによって生まれずに済んだ損害分を報奨金としてその人に出す、という制度もあります。
−でも、もう1つ内部告発が起きない理由として、就職する際の契約で「守秘義務」というのがありますよね?その、守秘義務と衝突してしまうことについては、どう解決していくのでしょうか?
- 川田:
- 最初から「外に向かって告発する」ということが目的ではなく、まずは自分の会社内でそれを告発することから始まります。それでも対策が採られず、やむを得ない合理的な理由で外に対して告発をするという場合に、告発者が守られるようになっています。まずは、内部でしっかりと告発を汲み上げる仕組が重要なわけです。
最近は、企業の方でも内部告発を奨励する方向で、企業からも提言が挙がっています。 - 最初から「外に向かって告発する」ということが目的ではなく、まずは自分の会社内でそれを告発することから始まります。それでも対策が採られず、やむを得ない合理的な理由で外に対して告発をするという場合に、告発者が守られるようになっています。まずは、内部でしっかりと告発を汲み上げる仕組が重要なわけです。
- 及川:
- 今までは、内部告発者が出てくる頃には、もうどうしようもない、とんでもない状態になってしまっていました。(今回の雪印のように・・・。) 内部告発者を守り、奨励することによって、問題がそこまで悪化する前の状態で明るみになって止められる、ということにも繋がっていくと思います。企業にとっても、これはメリットになるのではないでしょうか。
- 川田:
- アメリカでは、スペースシャトル「チャレンジャー」爆発事故の時に、部品メーカーの打ち上げ延期要請を内部で封殺して発射した結果あのような事故が起こったことなどが、この法律が出来るきっかけになりました。イギリスでも、法律が出来る前に、大列車事故であるとか、大手銀行のスキャンダルであるとか、様々な事例があって、その反省から法律が出来てきています。
−米英では、このような大きな事故があった場合、反省して、再発防止策としてこのような法律が出来上がるんですね。一方、日本では、薬害エイズほどの大きな出来事があっても、このようなシステムは出来上がっていませんね。
- 川田:
- 日本と違うな、と思うのは、例えば列車事故があったときに、ちゃんと調査委員会を作って、何故事故が起こったのか、ということについてきちんと調査が行われて、真相解明をするんです。薬害エイズについても、ドイツやアメリカなど先進国で同様のことが起こっていますが、日本がまだ訴訟で争っていた94年の段階で、ドイツでは日本の国会に当たる連邦議会が、調査委員会で報告書を出しているんです。海外では、議会がきちんと機能して真相解明をしていく、そしてそれから対策を採っていく、ということが行われているんですが、日本の議会は真相解明がきちんと出来ていません。それは情報公開法を通しても依然できていないので、今度は内部告発者を守るような法律が必要だと思います。
−いま、川田さんはお母さん(衆議院議員・川田悦子氏)の秘書をやっておられるわけですが、これから立法へと動いて行くわけですか?
- 川田:
- 議員立法をしたいと考えています。『人権アクティビストの会』では、明日、3回目の公開シンポジウムを開きます。第2回までで、この法律がどのような経緯で出来上がってきたか、ということ迄は勉強してきたので、今度は《日本でどのようにして立ち上げていくか》という段階になってきています。これからさらに認知を図っていき、色々な人の意見も採り入れていけるようにしたいと思っています。
- 及川:
- 明日のシンポジウムは、「ホイッスルブロアー法と情報公開」というタイトルです。講師は、川田龍平さんの他、後藤雄一さん(パン屋・都議会議員・『行革110番』代表)、三木由紀子(情報公開クリアリングハウス室長)などです。ここでの内容など、詳しくは、川田隆平さんのホームページ(http://www.kawada.com/)などで随時情報を発信していきます。
この動き、まだまだ小さな運動の段階だが、これから日本社会を変える大きな動きへと拡がっていくかも知れない。