米国の炭そ菌テロの漠然とした不安感が日本でも広がる中、実は先月下旬から松本サリン・地下鉄サリン事件の被害者に対する無料検診が静かに行われている。主催する市民ボランティア団体《リカバリーサポートセンター》理事・磯貝陽悟さんに電話で伺った。
- 磯貝:
- 先週は目黒、その前は越谷の保健所で出張検診を週末に行った。そして今日、明日(10、11日)は足立区本町の保健総合センターで行う。この3ヶ所はどこもサリン事件が起きた地下鉄の沿線の地域で、被害者が多く住んでいる。特に足立区は被害者が最も多い。
サリン事件から6〜7年。検診はまだ必要なのですね。被害者は今どんな状態ですか?
- 磯貝:
- 去年も同様の検診をしたが、その結果は、来訪された362人中347人が今も何らかの異常があると訴えた。具体的には、視覚の異常、身体の異常をそれぞれ6割の方が訴え、PTSD(心的外傷後ストレス傷害)の症状は女性3割・男性2割の方に認められた。今年は米国でのテロ事件で『気持ちが揺らいだ』『心の傷が掘り起こされた』と訴える人が多く、事態は去年より深刻だ。
サリン事件の被害者は約6000人。検診に来ない人はもう症状が無い、と考えてもいい?
- 磯貝:
- そんなことはない。警察から協力が得られないため被害者全員の名簿が手に入らず、1700人近くの方しか把握できていない。だから残りの方々には検診案内を郵送できない。去年、新聞等で告知したら、把握できていない方が当日たくさん来られた。その中に重い後遺症に苦しむ方もおられた。まだ多くの被害者に知ってもらう必要がある。
民間団体が苦労してやるのではなく、国がこのような被害者対策をしていくべきでは?
- 磯貝:
- 国は具体的に何もしていない。大臣は『どうにかする』と言うが、役人は『前例がない』『加害者がお金を出すべき』などと言い、実現しない。これは、テロでの大量被害者を日本がサポートできないことの実証。それなら、市民が自分たちでやるしかない。
《リカバリーサポートセンター》のメンバーは、どういう人たち?
- 磯貝:
- 何らかの形でサリン事件に関係した方が多い。この方々の力は国よりもずっと力強く感じる。理事長は、オウムに殺害された坂本弁護士の同僚の木村晋介弁護士。2人の副理事長は、それぞれ被害者学・毒学の教授。事件当時、被害者が搬送された聖路加病院の医師たちなども参加している。また、私はサリン事件を取材していたジャーナリスト。そして、サリン事件の被害者である河野義行さんなどに活動を監査していただいている。」
このように様々な職を持つ事件の関係者が設立した《リカバリーサポートセンター》。この名称には、(現在はサリン被害者の対応で手一杯だが)将来的にはあらゆる事件被害者を支援したい、という思いが込められている。 - 何らかの形でサリン事件に関係した方が多い。この方々の力は国よりもずっと力強く感じる。理事長は、オウムに殺害された坂本弁護士の同僚の木村晋介弁護士。2人の副理事長は、それぞれ被害者学・毒学の教授。事件当時、被害者が搬送された聖路加病院の医師たちなども参加している。また、私はサリン事件を取材していたジャーナリスト。そして、サリン事件の被害者である河野義行さんなどに活動を監査していただいている。」
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