金浦小学校『マスメディア探検隊』

放送日:2001/10/20

岡山県・笠岡市立金浦小学校(全校300人弱)は、「総合的学習の時間」を使って、5・6年生を対象に去年からメディア・リテラシーの授業に挑戦している。今年は、名づけて『マスメディア探検隊』。その様子を、参観して来た。

下村健一 第1段階(テレビ番組の"観察"=全8時間)、第2段階(その分析=全13時間)を経て、この日は、第3段階(制作体験=全40時間)の34・5時間目。生徒たちが6つの班に分かれて作った3〜4分のビデオ作品(『学校紹介』・『伝統行事紹介』・『先生の素顔』など)を全員で見て、皆の質問に制作者が答えるというスタイルだった。

先生が提示したポイントは、《自分の伝えたい事が伝わっているか》。子供達の質問は実に鋭く、「小学生でもここまで視点を深めることが出来るのか!」と感嘆した。子供どうしのやり取りを、いくつか御紹介しよう。

下村健一

  • 「何を質問してるか判らなかった。なぜ説明の字幕を出さないの?」
    ⇒「時間がありませんでした。」
    「何がどう珍しいのか、判りづらかった。」
    ⇒「ナレーションを増やします。」
  • 「私たちは登場人物のことを知っているけど、知らない人のために、その人についての説明を入れるべきだと思う。」
    ⇒「再編集して入れます。」
  • 「インタビューの答えが『ハイ』しかなくて変だ。」
    ⇒「たしかに。質問を前もって準備しておけばよかった。」
  • 「飼育係に対するインタビューの質問が、おかしい。」
    ⇒「どうおかしいんですか?」
    ⇒「銀座通り(校内の廊下の通称)がテーマなのに、関係ない事を訊いてると思う。」
  • 「走りながら撮影しているのは何故?」
    ⇒「走る者の視点で撮りたかったからです。」
    ⇒「でも見にくかった。」

    下村健一 また、皆の前で先生と下村の意見が分かれるなど、情報の受信には「1つの正解」があるのではなく「色々な受け止め方」があるんだ、ということも全てオープン! 先生自身も親達も受けたことのないこの新ジャンルの教育を、なんとか試行錯誤して作り出していこう、とする熱意溢れる2時間だった。
    あの子達だったら、今回の『眼のツケドコロ』の放送テープやこのホームページ自体をも鵜呑みにせず次なる教材にして、「あの2時間がどういう狙いでこういう形に編集されたのか」などとワイワイ議論するのかもしれない。実に頼もしい、と思う。

    現在《試行》段階にあるこの「総合的学習の時間」は、来年度から正式に全国で一斉に始まる。これを機に金浦小のようなメディア教育を導入する小中学校すべてに、メディア業界の専門家が出向くことは、理想的だがもちろん不可能。それに代わる共通の教材作りが、急務だ。

    そのために私も出来る限りのお手伝いをしていきたいし、大手メディアも、教材の材料になるような映像資料を提供するなどの協力を、是非してもらいたいと思う。

    【参考サイト】
    ★近日中に、生徒たちが今回の授業をまとめたWebページが出来上がる見込み。
    ★中心人物のひとり=高橋伸明教諭のページ ⇒ http://ww1.tiki.ne.jp/~nob-taka/

  • ▲ ページ先頭へ