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下村健一の中と外

自分は常識人だと思ってたのに……鼻と顎の衝撃2連発!

2007年10月22日

すでに「健ちゃん観察日記」でも暴露されているが、先日、鼻の手術を受けた。左の鼻の穴の奥の方を、殆ど塞がんばかりに飛び出していた鼻中隔の歪みを、矯正する手術。局所麻酔で明瞭な意識がある中での“工事”は、ゴリゴリ、ガンガンガン、メキメキメキッと頭蓋骨の真ん中へんが響き渡り、好奇心を大いに刺激される得難い不思議体験であった。

自分が鼻中隔湾曲症であることを知ったのは、17年前の「宇宙飛行士選抜検査」の時だった。日本人史上初の宇宙飛行士がTBS社員の中から選ばれることになり、僕も社命で、その選抜検査を受けたのだが、かなり人数が絞られた段階でこの病気がわかり、晴れて失格となったのだ。正直なところ、非・根性型の僕は、ロケット打上げまで半年間もモスクワ郊外の「星の街」で特訓を受けることが嫌で嫌で、何とか合格を逃れたいと心底願っていたので、この結果が出た時には、正に「鼻中隔サマサマ」の思いだった。

特に鼻息に支障もないので、それっきり鼻中隔様は放ったらかしておいたのだが、最近出張先で相部屋になった『サタデーずばッと』のディレクターから、「夜中、呼吸が止まってますよ」と思いがけない指摘を受け、それじゃあ熟睡も出来ていなかろう、とついに手術に踏み切ったのだ。家族からも、たびたび「イビキがうるさい」という指摘は受けていたが、無呼吸症候群まで起こしていたとは知らなんだ。たぶん妻子は、僕の呼吸が止まるたびに、「やっとイビキが治まった」(あるいは「やっと死んでくれた」!?)としか思っていなかったに違いない。トホホ…

耳鼻科の手術歴8千例以上という大ベテランの杉浦昭義ドクターは、評判通りの名医だった。手術が終わり、「ハイ、鼻で呼吸してごらんなさい」と言われ、最初に空気を吸い込んだ時の感動は、一生忘れない。おぉ、鼻の穴を吹き渡る、千の風! 世の中の人たちは、こんなに沢山の空気を鼻から出し入れしていたのか!と、心底驚いた。「自分が当たり前だと思っていても、実は全然常識知らずだった」ことって、やっぱりあるんだなあ。

で、すがすがしく退院したのも束の間、今度は右下の“親知らず”から耳の近くまでが痛くて、口がうまく開かなくなった。殆ど食事もできない有り様。どうやら、顎の関節と筋肉が炎症を起こしたらしい。今度はその道の権威を紹介してもらって、K大病院へ。ここでまた、僕は驚愕に遭遇する。ドクター曰く、「いつも上下の歯を噛み合わせていませんか?」 「はぁ…。それって、当たり前のことじゃないんですか?」 「普通の人は、1日24時間のうち合計30分ぐらいしか、上下の歯を噛み合わせません。他の時間は、(唇は閉じていても)上の歯と下の歯の間は、少し開いているんですよ」 「えーーー! 本当ですか!?」

世の中の人たちは、そんなに顎をリラックスさせていたのか! これがホントの、驚“顎”の事実。おそらく生まれてこの方ずーっと、歯というものは普段閉じているものだとばかり、僕は思っていた。ドクターにこう指摘されて以降、折々にふと意識してみると、なるほど常に、僕は歯を軽く食いしばっている。微妙に開いておくことの方が、不慣れで難しい。それでついに、顎の関節と筋肉が限界に達した、という訳だ。一体、何をそんなに辛抱しているんだろう? 実はそんなにツラい人生を送っているのか、俺は?