小下村塾/投球の仕方--自分で発信!

東京大学「メディア表現演習」講義

第9講 2003年6月30日

制作実習(映像編)―撮影

映像リポート制作第2ラウンドも、いよいよ佳境。どのグループも、あらかた構成が固まってきた。今回は、各グループが教室の外に散らばり、撮影に取り組む。私は自転車でそれぞれの現場を回り、撮影のポイントを実践的にアドバイスする。

[1]A班:社情研の校舎の不思議
作品のあらすじ:

地上10階建てなのに4階建てに見える、建物の広さに対して教室は異様に狭いなど、謎の多い社情研(社会情報研究所)の校舎。カメラが校舎内を探検し、その謎を解明していく。

撮影現場で:

建物の敷地に対して、2階の教室は異様に狭い。教室の奥には鍵のかかった"開かずのドア"が。学校側に話を聞いてみたところ、この扉の向こうは書庫になっているという。その事実を映像で現すには、どう撮影すればいいだろう? ドアが開けられないので、教室から直接書庫へ入っていく、というカットは撮れない。カメラマンとリポーター役が、このドア経由とは別ルートから書庫に入り、もう1人が教室側から呼びかける、という方法を考えている。
構成は、
教室でリポーターが前振り「このドアの向こうはどうなってるんでしょう?」
  ⇒カメラ、書庫の中へ移動
  ⇒ドアの向こうから、教室に残ったもう1人の声が聞こえる
―という感じ? ただ、リポーターの前振りが"創作"になってしまわないだろうか?

アドバイス:
≪事実を伝えるために必要なら、堂々と≫

"開かずのドア"を挟んで、音によって同一のドアか確かめるアイディアはグッド!
変に"作り"を加えず、本当に必要で行う取材プロセスを、そのまま淡々と撮ろう。
教室でおもむろにドアをノックし始める制作メンバー
  ⇒ノックを続けるメンバーを残し、カメラ、別ルートから書庫の中へ移動
  ⇒ドアに近づくにつれて、ノックの音がだんだん大きく聞こえてくる
―という素直な構成で十分で、何も凝ることはない。
ノックは、事実を確かめるために本当に≪必要≫な動作なので、"創作"にはあたらない。

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[2] B班:東大学生食堂の今昔
作品のあらすじ:

学内で一番古い場所、学生食堂『メトロ』の歴史を紐解き、過去から現在までの変化を現したい。

撮影現場で:

≪メッセージは現場にある!≫
「『メトロ』は歴史のある食堂です」と言葉で言っても伝わらない。『メトロ』の歴史を物語るようなカットがないか、探してみよう。
例えば、店の入り口付近にある水道。蛇口の型が古く、流し台には無数のヒビが入っていて、いかにも前時代の生き残り、という雰囲気がある。また、公衆電話の側にある黄ばんだポスター。これにはなんと「NTT」ではなく「電電公社」の文字が。他にも、古い看板や落書きなど、ボーっと通り過ぎずに見つけて歩こう。
 

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[3] C班:ウエディング・トリック
作品のあらすじ:

突然の出来事に、人間はどう反応するのか? 社会調査モノに挑戦したい。ウエディングドレスを着た制作メンバーの1人(男)が街の中を走り、通り掛かりの人達の反応を撮る。

撮影現場で:

ウエディングドレスを着てキャンパス内を走ってみたが、通行人の一瞬のリアクションを、うまくカメラで捉えられない! また、それらのリアクションから何がわかるのか、"考察"の部分を考え中。

アドバイス:
≪社会調査モノは、サンプルの量が勝負≫

"考察"部分が定まらないのは、サンプルがまだまだ少ないから。面白いリアクションはたくさんあるのに、撮れていなくてもったいない! このグループはカメラを2台用意しているので、カメラ位置にも工夫を。1台が道路のこちら側、もう1台が向こう側に立ち、お互いの死角になる部分にレンズを向けよう。カメラマン以外のメンバーも横に立ち、面白いリアクションがあったら即カメラマンに指示すること。

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[4] D班:都内の風景/レトロと近代の対比
作品のあらすじ:

渋谷、新宿、六本木などの新しい街と、レトロな下町との対比がしたい。まだ何を撮るか絞り切れていないのだが…。

撮影現場で:

今日の撮影場所には、上野動物園を選んだ。周辺の景色や、通りかかる人のインタビューを撮ったが、なかなか狙い通りのものが撮れない。できれば"下町の名物おじさん"のような人から話を聞きたいのだが、見つからない。

アドバイス:
≪"聞きたい内容"で、"相手の探し方"は違う!≫

この場合は、道端で通りがかりの人をつかまえる"行き当たりばったり方式"ではなく、狙いを定めて探す"ピンポイント方式"で取材相手を見つけよう。まずは、町内会長や商店街の組合長のような、その町の事をよく知っていて、且つ取材者側からアクセスしやすい人に話を聞く。そこから「○○な人を知りませんか?」と芋ヅル式に広げていけば、目指す人物にたどり着けるはず。
『ウエディング・トリック』班のように、現場で出てくる予想外の物を撮りたい時は"行き当たりばったり方式"、この班のように、話を聞きたい人や内容が定まっている場合には、"ピンポイント方式"で探すこと。

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 次回予告―

次回は、作品の中間発表会を行う。各グループで、撮影・編集を出来る限り進めてきて欲しい。映像リポートの完成締め切りは再来週。みんな、制作に鋭意取り組んでほしい。