新潟中越地震の現場で見えた、ボランティアの《進化》

放送日:2004/10/30

新潟中越地震から丸1週間が経った。今朝は、被災地の中心に位置する小千谷市の現場に身を置いてリポートする。

1995年に起きた阪神大震災の際、私は、地震が起きて最初の1週間現地で取材をしていた。その時と比べると、今回の新潟の地震では、ボランティアがとても効率的に動いていると強く感じる。今日は、その一味違うボランティア活動に眼をツケたい。

阪神大震災の時には、最初の頃、どっと押し寄せるボランティアをさばける人が居なかったため、大変混乱した。しかし、今回はその時の経験が生きている。例えば、昨日(10月29日)は、小千谷市のボランティアセンターに、外部から来た357人がボランティア登録したが、仕事がすぐに割り振られ、各避難所を回る「御用聞き」とか、市役所に届く物資の整理とかの活動にさっと取り掛かっていた。

どのような流れで仕事が割り振られるかというと、ボランティアセンターに到着した人は、まず、『申込所』に並ぶ。受付の番号順に進んでいくと、そこで名前を登録したり、ボランティア保険に加入したりする。(1人630円の掛け金は、新潟県の社会福祉協議会が負担。ボランティア活動中の死亡は1000万円以上、入院は1日6200円、などの保障がつく。)最後に、「こんなニーズがあります」といった張り紙がボードに一括して出ているので、それを見て、自分が持っている《得意技》と照らし合わせて「これ出来ます」とすぐに動き出せるわけだ。例えば、車が入れない悪路をオートバイで入っていって手伝う人や、「パソコンの技術があります」ということで、ボランティアの登録や必要な作業とのマッチングを手伝うなど、それぞれの得意技を生かしている。本当にスムーズだ。

この一連の流れは、阪神大震災から始まり、今年の新潟の水害ボランティア活動に至るまで、その都度仕組みの改良が重ねられ、今回に生かされているのだ。新人ボランティアを指導している中年の男性に声を掛けたところ、「自分は千葉県から来ていて、雲仙普賢岳の災害、阪神大震災、そして、今回の新潟の地震と手伝ってきたが、その度にボランティアが《進化》している事を感じる」と話していた。

実際、『ボランティア受付カード』を見ても、最初の欄は本人の住所・氏名より先に、乗ってきた車種(ワゴン車とか、軽トラックとか、オフロードバイク、自転車などの選択肢)を書くようになっている。「だったら、あなたはこのような場所に行ってください」という指示判断の材料になるわけだ。同様に2段目は、救命救急士、調理師、ヘルパー2級以上、または「パソコンができます」など、資格・特技の欄だ。(このカードは、ボランティアの大学生達が、その日の体験を基にして、夜中に改良版を作成しているというから、今もなお《進化》の途上ということだ。)

“特技”という点で目を引いたのは、SPICという美容業界のグループが、「水なしで使えるシャンプー」を約5000人分持参して現地に入っている事だ。神戸の地震の際にもある避難所で同じメンバーに遭遇したが、その時は初体験ということで、リュックサックを背負って手当たり次第に巡回していた。しかし、今回は、地元の理容師組合の方と上手く連携して、何処へ行ったら良いか情報を得ながら、効率的に活動している。これもボランティアの1つの《進化》だ。地元の理容師組合からこの活動に参加しているメンバーの中には、先日の新潟の水害でお店が床上浸水してしまった三条市の理容師もいて、「水害に遭った時に大変お世話になったので、今回は恩返しに来た」と言っていた。

また、『ボランティア受付カード』と同時に『ボランティア活動に行く前に』という心得のプリントを1人1人が受け取るのだが、そこには、「室内に入る際には、靴を脱ぐか、土足のままでいいのかを必ずその家の人に確認する」から始まり、「ゴミだと判断して捨てる前に、捨ててよいかを依頼者に必ず確認すること」、「ゴミを捨てるときに、ガラスを砕くときには、必ずゴザなどで包んでハンマーで割る事」、「夕方帰る際には、明日以降も活動を希望するかどうかを依頼者に確認する」など、極めて具体的な事まで書かれ、ボランティア初心者のトラブルを未然に防ぐ配慮が張り巡らされている。

もう1つ注目すべき事は、ボランティア参加者に、「何処からいらっしゃいました?」と尋ねると、外来者ばかりではなく、「そこの体育館からです」という答えがたびたび返ってくるのだ。つまり、避難している人(被災者)自身が数多くボランティア活動に加わっている、ということだ。別に参加を呼びかけられたわけではないのだが、《自分から動き出している》という方がとても多い。

ただ今回の場合、阪神大震災の時と違って悩ましいのは、「本当は、ボランティアの人に家の中の片付けを頼みたいのに、未だに余震が多く危険なため、建物の中に入れない」ことだ。現場を仕切っている人は、「ボランティアの人がどんどん来てくれているのに、一番人手を必要としている仕事をお願いできない歯がゆさがある」と話している。

そんな状況なので、29日夜の段階で、あるボランティアリーダーの方は、「今出来る仕事の数が限られているので、あまりに沢山の人が集中してしまうと、もしかしたら、仕事の割り振りをしきれないかもしれない。出来れば、平日に来てもらい、ボランティア活動を平均的にして頂けるとありがたい」と話していた。

また、ボランティアに来る人は、報道されて“有名”になっている避難所に集中しやすくなる。まず、ボランティアセンターに電話をかけて、人出が足りているか、いつ・どこに行くのが最もヘルプになるか、等を確認してから出発すると良いだろう。問い合わせ先は、下記の通り。

新潟県災害救援ボランティア本部
TEL025-281-5527 FAX:025-281-5529 
URL:http://www.nponiigata.jp/jishin/

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