朝鮮学校等の国立大受験資格認めず!

放送日:2003/03/15

今回は、明後日(3月17日)に行われる抗議集会に眼をツケる。『民族学校にも受験資格を!日朝学生有志による院内集会』というタイトルのこの集会は、国会の議員会館内で、在日朝鮮人・日本人の学生有志が合同で開くもの。集会の呼びかけ人である、在日三世で東京朝鮮高級学校卒業生のチョン・ヨンファン君に、話を伺う。

今回の抗議集会は、今までは一律に認められていなかった国立大学受験資格を今後はインターナショナルスクールに与える、という見解を文部科学省が発表したことを受けたもの。この際、朝鮮学校等のいわゆる民族学校には引き続き資格を与えない、と置き去りにされてしまったのだ。

チョン:
そもそも、朝鮮学校自体も、もともとインターナショナルスクールなんです。文部科学省の発表では、今度受験資格が認められる16校は、欧米の学校評価機関が認定した学校ということで、基本的には欧米言語で教育している所ばかりです。

−朝鮮学校・韓国学校に通う生徒は数多くいますよね?

チョン:
現在、全国に150校、約2万人の生徒がいます。この問題で焦点となる高級学校の卒業生は、年間約1000人います。

このような状況を受け、今週11日には、国立大学の教職員有志が、900名以上の教職員の署名を携え、連名で文部科学省に申し入れに行っている。「朝鮮学校の卒業生も受験資格を得られるような法的措置をとれ。それが無理ならせめて各大学の自主的判断で受験資格を与えられるように」、という訴えだ。この声明文の一節には、「『教育の国際化』とは、欧米の人々と席を並べて対話することだけを意味しているのでしょうか?アジアの人々との関係を棚上げにして進められる『教育の国際化』とはいったい何なのでしょうか?私たちは、民族差別の加担者になることを拒否します。」とある。下村も、国立大学講師としてこの連名に参加しようと考えている。

−しかし、同じように学校で勉強していながら、なぜ民族学校の生徒には大学受験資格が与えられないのでしょう?

チョン:
文部科学省の言い分では、学校教育法の1条校(第1条で定義されている学校)に朝鮮学校は入っていません。民族学校は、服装学院・看護学院・受験予備校などと同じ「各種学校」という枠に入っており、正式な学校とは認められていません。

−それはつまり、カリキュラムが特殊で、
普通の「12年修了」とは認定できないということですか?

チョン:
いいえ。カリキュラムについても、本国とは異なり、日本の形に合わせて6-3-3制を採っています。教育内容も、基本的に日本式です。朝鮮語で授業を行ったり、朝鮮史や「日本語」の授業を行っていたり、という独自な部分はごくわずかです。

カリキュラムについては、京都大学の同和人権問題委員会が99年、京都の朝鮮学校の教科書を調査した報告が出ている。それによると、「教科書の内容は日本の大学で学ぶに際して特に問題はない」、というものだった。
また、学校教育法施行規則の中には、大学受験資格を与える為の「学校認定条項」というものもあり、その最後には「その他、大学で、高校を卒業したものと同等以上の学力があると認められる者」はOK、という項がある。私立大学では、この条項を使って、民族学校の卒業生の入学を認めるところが、既に半数を超えている。

チョン:
私の場合は、今、明治学院大学の4年生ですが、私の受験は教授会の独自判断で認められました。ただ、まだ大学を卒業していないので、日本社会においては現在「無学歴」扱いです。

−私立大学のように、国立大学も独自判断で受験を認められないのでしょうか?

チョン:
制度的には可能ですが、実際には一校も受験を認めていません。文部科学省は、「学校認定条項は、終戦直後、旧制教育体制からの移行のために過渡的に設けたもの」という解釈をしているので、国立大学もこれに従って、現在の適用を避けているということになります。

このような状況のため、民族学校の生徒は大検を受けた上で大学受験をするという、迂回コースを採らざるを得ない。

チョン:
朝鮮学校や中華学校を「優先的に入学させろ」といっているわけではなく、「同じスタートラインに立たせてくれ」と言っているだけなんです。決して傲慢な要求などでは無いはずです。

このような状況になったそもそもの歴史的経緯を簡単におさらいしてみよう。戦時中まで、朝鮮半島から来た人には「日本人化教育」がなされてきたが、終戦の後、在日の人たちの中で自分たちの学校を作ろうという動きが出てきた。しかし、GHQや当時の日本政府は、閣議決定をして朝鮮学校を閉鎖せよ、という命令を出した。
この際の根拠は、在日の人は日本人だから、というものだったが、その後サンフランシスコ講和条約により、在日の人々の日本国籍は奪われてしまう。つまり、無償で教育を受ける権利もなくなってしまったわけだが、その代わりに朝鮮学校等が復権されるわけでもなく、学校教育法の規定だけはそのまま残り、現在のような状況になっているのだ。

チョン:
各種学校への制約については、当局は子供や教育の問題ではなく、治安対策と考えている節がずっと残っています。

この問題は海外からも指摘され、国連からの改善勧告も度々出されており、また国内では、日弁連の1997年の調査報告書が「現行憲法下での最大の人権侵害の一つだ」と言っている。さらに、経団連の意見表明、内閣府の総合規制改革会議などでも、「インターナショナルスクール卒業生の大学入学機会を拡大すべき」という意見も出されているが、これらの主張に民族学校が含まれているかどうかは不明だ。

チョン:
他にも問題はあります。自治体によって少しずつ違いますが、助成金が通常の私立学校に比べて少なくなっています。また、寄付をする際も、通常はかからない税金がかかってしまいます。
99年までは、大検すら受けられない状況でした。そのため、民族学校に通いながら、大検受験資格を得るために定時制の日本の高校に通い、さらに大学入試合格のために予備校に通い、という、3つの学校に通うという状態でした。それに比べれば現状は良くなっていますし、文部科学省も「アジア系学校については今後も検討する」と言っていますので、今後も働きかけを続けていこうと思っています。
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