なぜ日本は低調?イラク攻撃反対運動

放送日:2003/03/08

イラク情勢が揺れ動いている。そんな中、今日(3月8日)これから日本で、イラク攻撃に反対する全国行動が行われる。先月15日にも、世界一斉の反対行動があったが、日本での行動参加者は5000人程度。ところがイギリスでは主催者発表で200万人もの参加があった。しかし、昨日ブッシュ大統領が発表した「安保理決議無しでも砲撃する」というスタンスに対して、世論調査で比較をしてみると、イギリスでは67%、日本では87%もの反対があった。日本の方がむしろ反対が多いのに、その意思表示の場に来る人は遙かに少ない。この差はいったい何なのか?今日は、ここに眼をツケてみる。

日本のNPOが不得意とするPRの部門でアドバイザーをしている、「サステナ」というボランティアグループの発起人・マエキタミヤコさんという方にお話を伺ってきた。
NPOを取っつきやすいスタイルに変える、まさに、NPO界の広告代理店。今迄のNPOのどこが取っつきにくいか、マエキタさんに端的に語っていただいた。

マエキタ:
今まで、デモとか平和集会とか呼ばれるものは、私達は“シュプレヒコール型”と呼んでいますが、若い人にとっては怖い、クサイという印象で、今の人には合わないんです。昔の世代の残した功績はすごく大きいのですが、今の時代とは合っていない。みんなが乗れて楽しい、シュプレヒコールからニュームーブメントへ、作り替えていきたいと思っています。
下村:
でも、その提案が不真面目だとか不謹慎だとか、抵抗に合うことはないですか?
マエキタ:
もちろん、必ず会います!びっくりして、そんなこと出来ない、とか、うちを支えてくれてきた人達はそんなのじゃない!と言われています。ですが、そのままでは何も出来ず、内輪だけのコミュニケーションになってしまいます。ですから、今までの人達も大事にしながら、新しい人達へ話しかけていきましょう、と呼びかけています。いくつか事例を作ると、あちらの団体も大丈夫だったから、じゃあうちもやってみよう、ということで、徐々に広がって行っています。
下村:
そういう活動に変えていこうと思っても、マエキタさんの助言を実行に移せるセンスのある表現者を雇ったりすると、またお金がかかってしまったりしませんか?
マエキタ:
結構、お金を度外視してやってくれる才能ある人は、増えてきてます。こういう事に力を貸す人は、直接お金にならなくても、達成感として幸せになります。モチベーションがあって、ミッションがあって貫徹すると幸せになりますね。お金持ちにはなれなくても、達成感があってみんなから尊敬されます。そういうことが運動の姿も変えていくことになると思いますね。
世界では、そうやって楽しげに色々なムーブメントを盛り上げたり、クリエイティブな本やポスターを作っている人もたくさんいますので、そういう人達に負けないでやっていきたいと思います。
下村:
日本人は、自分の意見を言葉に出すというのが不得意、とよく言われますが、日本流の活動というのはこれから出来ていくのでしょうか?
マエキタ:
俺はオープンマインドだ!というのではなく、静かでゆっくり、人の意見を良く聞いて、自分の意見をしっかり言う、というのがかっこいいと思います。声が大きくても押しつけがましいばかりですし、むしろ適正な音量で自分の意見を言えるようになりたいですね。
よく「サイレント・マジョリティ」と言いますが、皆もっと考えている「シンキング・サイレント・マジョリティ」と思います。

また、これも日本人によくある「政治的な動きに手を染める罪悪感」という意識についても、マエキタさんはこう指摘する。

マエキタ:
生きている以上、税金を払っている以上、投票権がある以上、政治的な生き物が人間です。政治的という言葉に、どんより立ちこめる黒雲、というイメージがありますが、それは気のせいだ!として既成概念を取っ払っていきたいと思います。
下村:
気のせい、とも言いきれないですよ。学生達の中には、運動をすることで就職活動に響く、と心配する者もいます。
マエキタ:
現実社会がありますから、無視しろ、とは言いません。ですが、よ〜く観察すると、まだらにそういうものを許すところもありますから、そこを突破口にするしかないと思います。

では、問題意識を持って、変わろうとしている市民団体は実際に増えているのだろうか?マエキタさんによると、最近特に増えてきたと実感しているという。

マエキタ:
変わります。ここへ来て急に増えたので、面白いように変わると思います。理由はわからないけれど、皆が急に「出来るんじゃないか」と思い始めています。
最初はなかなかわかって貰えなかったんですが、最近リアクションが良いんです。アイデアがどんどん出てきて、国内でも面白い動きがどんどん増えているので、負けていられないな、と思います。

会社組織の中では、自我の強いものは使いづらいと敬遠されてしまう。加えて、政治=お金を儲ける、という悪いイメージもあって、市民運動にしらけムードが出てきてしまうのだ。そこに「サステナ」が登場したこと自体、非常におもしろい動きだ。これからおおいに注目したい。

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