青森の市民風車、昨日営業発電開始!

放送日:2003/03/01

青森県の鰺ヶ沢で、NPO法人「グリーンエネルギー青森」の建てた発電用の風車が、昨日(2月28日)から営業運転を始めた。今回は、このNPOの事務局スタッフ、三好龍平さんにお話を伺う。

三好:
分かりやすく言うと、巨大な白いろうそくの胴体のような形をしています。タワーの部分が65メートルあり、そのてっぺんに35メートルの羽が3枚ついて、回転するようになっています。場所は、新しくできた国道バイパス沿いにあり、まわりに建物が無く、背景に岩木山、眼下に日本海を臨む最高のロケーションです。

−これで、どれくらいの量が発電できるんですか?

三好:
概算で、1年で370万キロワット、約1100世帯分をカバーできることになります。

−「営業運転」ということは、売電するということですよね?

三好:
そうですね。私どもで東北電力さんと契約をし、1キロワット当たり11.5円で17年間全量を買い取って下さる、ということになっており、計算上は年間4000万円程度の収入が入ります。自然発電からの売電については、このように各電力会社さんで既にメニューを持っていらっしゃいます。

既に、日本全国の電力会社で、私的な発電からの買電制度ができあがっている。東京で、「下村発電所」を作って東京電力に売電する、ということももちろん可能だ。

−電力会社に買電するため、どのような準備をなさったのですか?

三好:
風力発電にもっとも大事なのは、風が強いことです。ですから、風況、電波・環境への影響等について、今回私たちは2年ほどかけてシミュレーションしました。

今回の風車は、建設費はどのくらいかかっているんですか?

三好:
およそ4億円になります。風車自体に2億円かかっています。
私どもが事業を始めるにあたって、経済産業省の「新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)」というところから、草の根支援の補助金システムを使って、費用の1/2を補助していただきました。残りは市民から集めたり、銀行からの借り入れでまかないました。

NEDOとは、新しいエネルギーを地域に導入しよう、という活動を資金的に支援していこうというもの。昨年10月21日付で補助金が交付されたのは100件あり、そのうち3件が風力発電、60件が太陽光発電、13件が太陽光とその他の発電の合同、となっている。今のところ、太陽光発電がほとんどをしめる。

−残りは市民からの出資ということですが、地元の方から集められたのですか?

三好:
鰺ヶ沢枠、青森県枠、全国枠という枠を作り、一口10万円で出資を集めました。出資金には、出資者の住む場所によって利回りを分け、鰺ヶ沢枠が3%、青森県枠が2%、全国枠が1.5%としています。
今回のプロジェクトは、地域の自立ということを考えておりますので、地元により有利な利回りを設定しました。

決して、『眼のツケドコロ』でもうけ話を紹介しよう、ということではない。このプロジェクトの場合、発電できなければお金が儲からない、まさに「風まかせ」のもの。このような場合、≪意義≫に賛同して寄付のつもりで出資する気持ちでいないと、後でトラブルになりがちだ。
だが、最近はNPOの形を装って実は金儲けを狙う私企業も増えており、根っこが儲けにあるのか、市民運動にあるのか、しっかり見分けることが重要だ。

−風力発電ということは、風が吹かないと発電できない、ということになってしまうんですよね?

三好:
確かに発電量が不安定ですが、電気というものは実は使用量も常に不安定です。ですから結局、もっとも大事なことは「系統連携」がスムーズにいくことです。私どもは、風向風速に応じたドイツ製の制御装置を導入しているので、機械的には全く問題はないのですが、最終的には双方のバランスがうまく取れて行ければ、と思っています。

−そもそも、三好さん達がこのプロジェクトを始めたのはなぜですか?

三好:
元々、『21世紀のエネルギーを考える会』という任意団体が元になっています。そこで、循環型社会の実現と地域の自立、自分たちの使うエネルギーは自分たちで選んで使う、ということをやっていきたいと思って始めました。

−国内で、他にもこういった動きはあるのでしょうか?

三好:
はい。
我々のNPOの兄貴分である「北海道グリーンファンド」というNPOがあるのですが、こちらが一昨年の9月に、全国初の発電用風車「はまかぜちゃん」を作りました。こちらも、私たちと同じように出資方式で資金を集め、今現在も順調に稼働中です。
また、秋田県天王町の方でも、私たちのプロジェクトと同時進行で、「天風丸」という風車が今日(3月1日)から稼働することになっています。

−全国枠の市民出資については、どのような形で出資を行えばよいのでしょうか?

三好:
全国枠については、明後日(3月3日)から受け付け開始になり、我々NPOとは別団体の「自然エネルギー市民ファンド」という会社が受け付けています。03-5366-1848にお電話頂ければ、詳しいことをお教えいたします。
今回、出資いただいた方には、お名前を風車に刻ませていただきます。出資される方はお年寄りの方が多いのですが、名義をお子さま、お孫さんのものにして、名前を刻まれる方もとても多くなっています。このような形で、循環型社会、自然エネルギーについて、お子さまに興味を持っていただけたらと思います。

省エネルギーのために、電気を使わなければいいんでしょ!という極端な発想では、社会は何も進展しない。原子力発電所のように一極集中で物事を行うのではなく、この風車発電のように、新しい技術を取り入れながら効率の落ちない、地域分散型の仕組みを模索していければ、新しい形で小回りの利く社会が形成できるのではないだろうか。

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