「めだかの学校」分校ただいま1600校

放送日:2002/07/20

今回は、大変ユニークな環境運動を2つご紹介する。「粘土団子」と「めだかの学校」。NPO法人「めだかの学校」理事長で、主婦の中村陽子さんに、解説していただく。

−粘土団子って、いったい何なんですか?

中村:
種に、粘土の衣を付けて団子を作り、その団子を蒔きます。そうすると、砂漠のような乾燥しているところでも、芽が出るまで粘土が種を保護してくれるんです。主に砂漠緑化などに役立っています。
作り方はとても難しくて、団子に空気を入れないようにしないと、乾燥した際に割れて、種を鳥に食べられてしまいます。他にも、種を真ん中に入れる事も重要ですね。こうして作った粘土団子を、砂漠にポイポイとまいていきます。種は1つだけでなく、何種類も入っているので、自然に、その土地の条件にあった植物だけが育っていくようになっています。
この粘土団子は、自然農法の父とも言える福岡まさのぶさんが考え出した方法です。今では、世界の様々な砂漠に日本から400種類以上の種を送り、その土地に合った作物がきちんと育つようにしています。
例えば、同じ大根の種でも、日本でまけば太くておいしい大根が出来るのに、砂漠地帯では細く長く根が伸び、上は花がたくさんついて種をたくさん作るようになります。一世代で、すぐに適応してしまうんですね。

−どのようなところで実績を挙げられているんですか?

中村:
タイやインドでは、自然農園を作るところまで行っています。最近ではギリシャ、マヨルガ島などの、れき砂漠にも適応出来ています。
私達日本人は種を集めて、向こうに行って指導をするだけです。本当に種をまいたり、育てるのは現地の方々にやっていただいています。砂漠化してしまったところでは、種を集めても10種類くらい、という場合もありますが、日本では雨も降り草花も多いので、ちょっと集めれば400種くらいの種がすぐに集まります。

この「粘土団子」については、中村さんは種集めに協力し、主たる活動は福岡さん等が行っている。
もう1つ、中村さんが創設者であり、中心となって行っているのがNPO「めだかの学校」だ。

−「めだかの学校」の仕組みを教えていただけますか?

中村:
めだかの学校は川の中」という歌がありますが、この学校は「田んぼの中」、なんですね。めだかというのは、学名で言うと「田んぼの魚」という意味で、稲とめだかは切っても切れない縁にあります。田んぼで卵を生み、小川や用水路を行き来していたものなんです。
それが今絶滅危惧種になってしまった理由は、田んぼの排水路が3面コンクリートで固められていることです。めだかは秒速5センチでしか泳げないのですが、これでは流れが速すぎてめだかが流され、田んぼへ戻れなくなってしまうんです。ですから、めだかが戻れるような農地や農村全体を作り、めだかが繁殖できる、生き物いっぱいの田んぼを目指しています。
これも福岡まさのぶさんと関係してくるのですが、田んぼを耕さない「自然農」によって、自然の生態系が復活するんですね。そして、創設者である岩沢のぶおさんが、稲の丈夫な育て方を考えていた時、耕さない稲作りをすることで、十分な根を張り、冷害に強い稲が出来ることに気がついたんです。
そして、そういう田んぼを作ってみたら、生き物たちがみんなわいてきたんです。ですが、めだかだけは排水路のせいで戻ってきませんでした。試しに、地域で生き残っているめだかを田んぼに放してみたところ、爆発的に増えました。そこで、「めだかの学校」をつくって、めだかが生きていける環境も作ろう、という活動を進めています。
さらに、子供達にも生態系を見せる教材として見せようということで、一部分を切り取ったミニ田んぼを、「めだかの学校分校」として各地に広げています。

「分校」は、発泡スチロールの箱に稲を植え、「耕さない田んぼ」の一部分を再現した物だ。耕さないため、普通は中に鋤き込んでしまう昨年の稲株と稲わらも残ったままだ。

中村:
これを1つのキットにして、子供達に送っています。この中に水を張っておくと、不思議と1週間くらいでミジンコや貝がたくさん出てきます。これは、昨年いっぱい生き物がいた田んぼの土に、たくさんの卵が眠っているからなんですね。

−この「分校」は、既に幾つくらい出来ているんですか?

中村:
昨年は1600分校が出来ました。子供達は「分校長」になって、ミニ田んぼを育てていきます。そして、生き物がわいて稲が少し成長してきたころ、本校の田んぼからめだかが転校してきます。今は、子供達が本校の田んぼを見に来て、どういう所でめだかが生きているのかを観察してもらった上で、めだかを持って帰ってもらっています。

中村さんの所に寄せられた観察日記も素晴らしい。ここで一部ご紹介する。

「めだかの転校式」
ミジンコが生まれ、藻や浮き草が成長し、めだかと稲が育ち、マルタニシも増えて命あふれるミニ田んぼになりました。そのことを他の学校の先生に伝えたところ、その先生に希望されて、水、土、藁、古株、藻も含め、4匹のめだかを、6月29日転校させました。とても辛かったです。

「稲の成長」
ぎらぎら照りつける暑い太陽の下で、稲はぐんぐん成長しました。青々と繁った葉の間から稲の穂が顔を出したのは8月2日でした。稲の花が咲くのは午前中です。もみが2つに割れ、稲の花が咲き始めます。中からおしべが飛び出して、おしべの頭から花粉が散り、めしべの先につくと受粉が終わります。受粉が済んだ花はすぐ閉じてしまい、もう二度と開きません。稲の花は穂の上の方から下に順に咲き、一週間掛かって咲き終わります。 実った稲を食べに雀が来ます。化学肥料や農薬を使わないで育てた僕達のごちそうを食べた雀は、丈夫な卵を生んでくれると思います。そして元気な雀が育つでしょう。僕達は二番穂の実りでワカメむすびを食べる予定です。

中村:
農家の人達も、生き残りをかけて協力して下さるんですね。今のまま、生き物がいないまま農薬をかけ続けていくだけではやっていけない、これに賭けてみよう、という方も多くいらっしゃいますね。

「めだかの学校」に参加してみたい方は、事務局(03-3569-2312月〜金10:00〜17:00)で受け付けている。

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