あしながHP開設の裏に外資の隠密部隊

放送日:2002/5/11

様々な理由で親を亡くした子供達に、進学資金を貸し出す団体「あしなが育英会」。そのホームページの非常に充実した英語版が、明日からスタートするが、実はこの制作に、ある外資系企業が密かにボランティアで大貢献している。

実は、この会社(こっそりバラすと、ゴールドマンサックス証券)は、世界中の職場の共通方針として、「社会貢献活動に関しては、一切PRしない」というポリシーを定めている。今回も、黙っているつもりだったそうだが、たまたま眼をツケてしまった私が無理にお願いして、東京で働くニュージーランド人・カナダ人・米国人のお三方に来て頂いた。

「あしなが育英会」とは、交通事故で親を亡くした遺児への進学資金支援を中心に行っていた「交通遺児育英会」から派生した団体である。ある時期から、災害遺児へも奨学金を送ろう、という事になり、更に、進学できた災害遺児らが恩返しとして「病気遺児にも進学の夢を」と運動を始め、この段階で"分家"して、交通遺児以外の遺児を担当する奨学金貸与・支援活動団体として、今の「あしなが育英会」が誕生した。
その後さらに活動は拡大し、阪神大震災遺児573人を精神的にサポートする癒しの家「神戸レインボーハウス」を作ったり、エイズ遺児への支援、さらに、不況で急増する子持ち世代男性の自殺に対応した「自死遺児」への募金…と、どんどん対象を拡大している。
「あしなが育英会」が最近13年間に奨学金を貸し出した遺児は11,443人、計103億円。1967年、「交通遺児を励ます会」の旗揚げ街頭募金で集まった額は、30万円。ここから現在まで、非常に大きく発展してきたのだ。

これらの事が全部、日本語版の「あしなが育英会」のホームページに掲載されている。そこで、こうした情報を世界にも発信しようと、英語版ホームページ作成プランが持ち上がり、「あしなが」側からゴールドマンサックス社に手伝い依頼の打診があった。それを受けた広報担当者が、社内メールで呼びかけをし、それに応えたのがこの皆さん、というわけだ。

ポール(ニュージーランド):
最初は、「あしなが」から送られてくる日本人が書いた英語のドラフトを、ボランティアの5人で分担して直していました。その後、誰か一人が全体をチェックする体制を思いつき、私が「あしなが」に行って、担当者と相談しながら、ホームページを完成させました。
このホームページが出来たことによって、「あしなが」がどういう活動をしているかが、世界中の人々に伝わることを期待しています。興味がある人は、「あしなが」を簡単に検索することが出来ます。又、世界中から寄付金が集まることを期待しています。

−更に、ホームページにとどまらず、「あしなが」メンバーに対する無料英会話レッスンも始めたとか…?

アロック(米国人):
あしながの学生達に、毎週一回くらいオフィスに来て貰い、約2時間のレッスンをしています。現在、10人ほどの先生役のボランティアがいて、その人の仕事のスケジュールによっても違いますが、できるだけ参加するようにしています。参加した先生は、その日教えた内容を必ずメールで他のボランティアに伝達しています。

−そもそも、何故英会話を教える、ということになったのですか?

マニッシュ(カナダ人):
学生さん達が、「あしなが」の活動を広めるために、この夏に渡米するんです。その時、ちゃんと交流が出来るように、ということです。また、いわゆる「方言」を理解できないと、きちんと聞き取れませんから、色々な国の先生を集めてレッスンをしています。

−どうして、ここまで積極的にやろうと思われたんですか?

ポール:
「あしなが」のビデオを見て、感動しました。そして、自分がとても恵まれていると思い、手伝ってあげたい、と思いました。
アロック:
今迄知り合う機会の無かった、社内の他の部署の人達と友達になれることも、大きな成果でした。
マニッシュ:
自分の国にいるときでも、ボランティア活動は結構するんですね。そういう習慣をちょっとずつ日本に持ってこようと思い、こういうプロジェクトに参加しています。

「あしなが育英会」側のHP担当者・岡崎さんにも、電話でお話を伺う。

−英語版ホームページの明日オープンに、どういうことを期待されていますか?

岡崎:
まず、世界中の方々に、遺児の現状を含めて知ってもらいたい、ということです。また、このホームページが、遺児や関係者の方々の交流の場になれば、とも思っています。さらに、クレジットカードを使って、ホームページ上からオンラインで募金が出来るように作成しました。世界中から、募金が簡単に出来るようになったんです。

実は、3年前のトルコ、台湾、コロンビアの大地震の時、阪神大震災遺児学生たちが「恩返しをしよう」と提案し、全国で街頭募金をして3国に約3600万円を贈ったことがある。 それがきっかけで始まった「国際的な遺児の連帯をすすめる交流会」が、なんとこの夏、去年のニューヨーク・テロで親を亡くした遺児たちと、その報復のアフガン空爆で親を亡くした遺児たちを同時に日本に招いて、励まし合う集いを計画している。

−その経費を捻出するための募金が、今週月曜(5/6)、全国32ヶ所であったそうで…。

岡崎:
海外遺児の支援ということで、日本人からは遠い物になってしまい、あまり反応は良くありませんでした。明日、費用捻出のキャンペーンの1つである「Pウォーク10」というイベントを、全国87ヶ所で開催します。今回は、外国人の方々も大募集していますので、是非参加していただきたいと思っています。

※「あしなが育英会」のホームページは、http://www.ashinaga.org/
ここから、英語・日本語に分かれて入ることができる。

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