課金式インターネットTV局、スタート

放送日:2001/11/17

今月(11月)から、非常に興味深い新しいニュース系メディアがスタートした。その名は、『ビデオニュース・ドットコム』。見たい項目をクリックすると、詳しいリポートVTRが流れ、1回100〜200円が自分のクレジットカードから自動引き落としされる、という仕組みのインターネットTV局である。
《この実験的試みは日本社会に定着するのか?》をテーマに、設立者の神保哲生さん、宮台真司・都立大助教授と私で、約1時間半のトークをし、その模様を、『ビデオニュース・ドットコム』と『眼のツケドコロ』という異種メディアで同時公開しよう、ということに相なった。「完全ノーカット」で「いつでも見られる」ドットコムには到底かなわないが、「15分に凝縮」して「土曜の早朝」、"旧式メディア"なりに、このトークを紹介しよう。

神保:
「報道という仕事は、ボランティアで別の仕事をしながら出来るものではない。でも、自分の取材成果を、お金を取って見てもらうのは大変なこと。今月初めにスタートして2週間で、今の所500人ほどが契約してくれたが、まだまだペイしない。でも、既存メディアの1%の制作コストでも、いいモノは出来る!
主要メディアは大所高所から伝えるばかりで、地に足のついたジャーナリズムが存在しない。自分にとってどう影響するか?を伝えられていない。例えば、周辺事態法が報道された時。米子のケープルTVで『もし事態が起きて空港も港も接収されたら、例えば大阪工場で現像した写真が戻って来なくなるかも』などと伝えたら、自分にもこんなに関係するのか!と、皆ビックリしていた。ケープルTVがきちんとローカルニュースを作れば、面白いのだが…」

下村:
「以前、神保が某ケーブルTV局のニュース担当者の指導をしているプロセスを見たことがあるが、本当に目を見張った。あの光景自体を、ぜひWebにアップしてほしい。」
神保:
「ああいう指導は、今でもやってる。ケーブルTVの人たちは、情報番組は作っているがジャーナリズムの手ほどきを受けたことがない。だから、もらった情報をそのまま流してしまう。ポーター(運搬人)にとどまっていて、リポーターになってない。発信する側には、報道した責任があるのだ。だからまず『情報に裏づけはあるの?』から教えている。」
下村:
「すごいのは、指導すると効果テキ面ということ。大幅に視聴率が上がったんだよね?」
神保:
「米子市の半分くらいの人が見るようになった。ケーブルTVの人は一応、取材なり編集なりは出来る。だから、ちょっとこちらがプロとして方向性を提示すればすぐ効果が出る。でも完全な素人は、怖がって人に話さえ聞けない。実は今のケーブルTVのレベルまで行くのは大変なことで、素人にゼロから教えるのはものすごく時間と労力がかかる。」
下村:
「裾野を広げるには小学生からメディア教育しないといけないけど、神保にはとてもそこまで手が回らないよね。神保は"最後の受け皿"になるべき。」
神保:
「そうそう。でも教えるべき"上級者"がほとんどいない。これはショックだった。」
下村:
「日本では、自分で作って表現しよう、という人がまだまだ少ないのが現状だからね。」
神保:
「裾野の問題は確かに重要。上だけを引っ張っても、ピラミッドは尖っていく一方で、いつかは倒れてしまう。」
下村:
「ビデオニュース・ドットコムにいる若いスタッフは鍛えられるね!とても楽しみ。」

宮台:
「こういう"違ったメディア"がある、と知ってもらうことがまず重要だ。私はよく『どこで情報を得たらいいの?』と聞かれる。そういう方にまず知ってもらい、さらに知ってもらった方々に、くちコミやメールで、内容の是非は別にして『これを見ると違ったニュースの見方が出来るよ』ということを多くの人に伝えてもらいたい。」
神保:
「多くの人にアクセスして頂けたら、収益は上げず、1クリックの課金額を値下げする。出来るだけ多くの人に見てもらいたいから。1億人から10円ずついただく、というのが理想なんだけどね。」


神保氏は、スポンサーの御機嫌を一切気にせずに100%自由に伝えるためには、報道は視聴者のおカネで支えられなければいけない!という意気込みでやっている。近年メディアのあり方に対してとかく批判的な日本社会が、この具体的《代案》をどこまで受け入れるか―――極めて極めて注目の実験である。

で、あなたは如何ですか? 以上のトークのノーカット版を見るために、200円を払ってみる気は、ありますか? 「Yes」の方は、下記URLへどうぞ。
http://www.videonews.com

※とりあえずトップページを覗くだけなら、課金はされません。

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