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メディアが変える 既存メディアは変わるか

蓮池薫さんという、ある大学嘱託職員の話

2007年8月2日

昨夜、アメリカ出張から戻った。テキサスから転進した第2取材地サンフランシスコから、成田直行便で帰る優雅な観光客達を尻目に、安いチケットを求めてわざわざロサンゼルス乗り継ぎという貧乏学生旅行のような遠回りコースでの帰国。ホントーに疲れた…。

というわけで、今初めて、先週の『サタデーずばッと』を振り返る時間が出来た。先週の放送は、普段にも増して、ちょっと“意識”したスタイルだったので、ここに書き留めておきたい。《中身》としては、「先日の中越沖地震被災者の中には、実は多くの留学生もいた。異国で恐怖体験をした上に、寮が危険で住めなくなり、とりあえず身を寄せる実家も無い彼らをケアするために、大学関係者の知られざる尽力があった」というお話。ただ、その「大学関係者」の中心メンバーの1人に蓮池薫さんが含まれていたために、放送の《スタイル》へのこだわりが生まれたのだ。

当然ながら、大学当局側や蓮池さん御本人からは、「あの北朝鮮拉致被害者の…」という目線は、今回の「留学生支援」とは何の関係も無い事だから厳格に切り離してほしい、という強い要望が出されていた。それを受けて、この留学生達を取材した他の幾つかのメディアは全て(先週放送時現在)、蓮池さんの存在をきれいに消した記事やリポートを発信していた。それも一つの姿勢ではあろうけれど、僕はちょっぴりそこに違和感を覚えていた。「これって、形を変えた《特別扱い》じゃないの?」と。

今回の地震後の蓮池さんの活躍ぶりは、これが普通の大学職員だったら、十分報道に値する。ならば、それをそのまま「一職員の話」として普通に報じることが、「いちいち拉致と結び付けないで」という御本人や大学側の要望に応える、最も自然な形ではないのか。「あくまで拉致被害者として報じる」か「全く触れない」かの2つに1つ、というのは如何なものか。

かねてから僕は、「何か別の話題で、この5人が普通にサラッとTVに登場できるようになった時、5人への特別扱い解消は大きく前進する」と考えていた。今回は、蓮池さんにとって正にその機会だった。『ずばッとリポート』は、拉致の“ら”の字も1度も言わずに、例えば「佐藤さん」などと言うのとまったく同じ口調で「蓮池さん」と言いながら、このニュースを報じた。

《何を伝えるか》だけでなく、《どう伝えるか》へのこだわり。やっぱ、大切だよね!